第13回LC研究会のご案内

第13回のLC研究会を以下の予定で開催します。

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第13回LC研究会
日時: 2010年5月26日 (水) 17:00〜19:00
場所: 国立国語研究所モニター室
発表者: 久保田ひろい (千葉大学大学院融合科学研究科)
題目: 絵文字は何を伝えるか:絵文字のパラ言語的振る舞いについて
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概要

「話すように書く(打つ)」と形容されるように、携帯メールで使用される言語は、文字言語を媒介とする一方で、手紙のような文字言語とは異なり、非常に”話しことば”的である。しかし、音声を介したコミュニケーションにおいては、言語情報に加えて、発話意図や発話態度の伝達・理解に寄与するパラ言語情報が同時に与えられるが、携帯メールではこうした情報は全て欠如してしまう。この「パラ言語情報の欠如」が、コミュニケーションに齟齬をきたす可能性がある。そのような制約の中で必要に迫られて誕生し、日本において発展したのが絵字である。しかし、これまで研究の対象とされてきたのは、「笑顔」
や「ハートマーク」のような直接的に発話態度を示すための絵文字であり、それ以外の「ネコ」や「リンゴ」あるいは「電車」といった絵文字は指示対象の代替としての機能、あるいは装飾としての機能しか示されてこなかった。そこで、本研究では、「ネコ」や「リンゴ」などの絵文字も表情の絵文字と同様に、携帯メールにおいて欠如したパラ言語情報を補完し、発話意図や発話態度の伝達・理解に寄与するという仮説のもと、メール音読実験によって得られた音読音声の音響的解析という手法により検証を行った。メール音読実験は、言語情報のみのメール文と絵文字の付与されたメール文をランダムに提示し、実験協力者に読み上げさせた。そこで得られた音読音声の韻律特徴を抽出し、各特徴量をテキストのみの場合と絵文字が付与された場合とで比較した。その結果、表情を表すような絵文字だけでなく、リンゴなどのモノを表す絵文字であっても、メール文に絵文字が付与されると、テキストのみの場合に比べて、F0平均値、F0最大値、F0最小値の上昇、持続時間の引き延ばし、F0曲線の傾きの正の方向への増加という傾向が認められた。