第16回LC研究会のご案内

第16回のLC研究会を以下の予定で開催します。

今回は9月にある国内学会の発表練習として、4人が発表します。

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第16回LC研究会
日時: 2010年9月1日 (水) 13:00〜19:00(最大)
場所: 国立国語研究所モニター室
発表者&題目:
1. 久保田ひろい(千葉大学大学院融合科学研究科)
携帯メールにおける会話終結部の定形化:
携帯メールにおいて「会話の終了」はどのように達成されるか
2. 榎本美香(東京工科大学メディア学部)
多人数会話において修復はどのように生じるか
—コミュニケーションにハンディキャップを抱える人を含む雑談データを通じて—
3. 東山英治(千葉大学大学院人文社会科学研究科)
ゼロ代名詞に同期するジェスチャー
4. 伝康晴(千葉大学文学部)
同期発話の認知メカニズムに関する一考察
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【社会言語科学会第26回研究大会】

タイトル:携帯メールにおける会話終結部の定形化:
携帯メールにおいて「会話の終了」はどのように達成されるか
著者:久保田ひろい(千葉大学大学院融合科学研究科)
概要:
電話会話において会話の終結部は非常に言語形式の定型性が高く、談話の構造も慣習化されていることが指摘されているが(e.g. Schegloff & Sacks, 1973)、電話でのやりとりでは、こうした一連の慣習化された手続きの遂行にさほどの時間を要さないのに対し、携帯メールでは、入力時間、送受信時間を必要とし、さらに一つのメール内でターンを交代することができないため、これらの一連の手続きをすべて行おうとすれば、会話の終結のためだけに何度もメールの送受信が必要になってしまう。そこで発表では、収集したメール会話のデータをもとに、携帯メールの会話終結部がどのような特徴を持つのかを分析した。電話会話では特定の談話標識(「じゃあ」など)が談話終結部の特定個所に生起することが高度に慣習化されることで、最終発話交換が行われずに終結することも少なくないことが指摘されているが(熊取谷, 1992)、携帯メールでは、「じゃあ」などの特定の談話標識の使用に加え、”相手の使用した絵文字の借用”など会話終結部の絵文字使用にはいくつかの型が見られた。
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【日本認知科学会第27回大会】

タイトル:多人数会話において修復はどのように生じるか
—コミュニケーションにハンディキャップを抱える人を含む雑談データを通じて—
著者:榎本美香(東京工科大学メディア学部)
岡本雅史(成蹊大学理工学部)
概要:
本論文の目的は,多人数会話において修復連鎖がどのように行われているかを明らかにすることである.そのために,コミュニケーションにハンディキャップを抱える人々を含む多人数雑談データを通じ,参与者役割と各参与者の認知状態という観点から,多人数会話特有の修復連鎖構造を分析する.この分析から,(1)修復連鎖は話し手と特定の聞き手の間でだけ生じるのではなく,すべての参与者が参与するものであること,(2)すべての参与者が共有基盤構築のために各自の認知状態に応じた参与の仕方をしていること,(3)ときに<合意形成フェーズ>と呼びうる連鎖を伴うことを例証する.
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【日本認知科学会第27回大会】

タイトル:ゼロ代名詞に同期するジェスチャー
著者:東山英治(千葉大学大学院人文社会科学研究科)
伝康晴(千葉大学文学部)
概要:
ジェスチャーは言語の単なる付属品でなく、談話構造を分析する手がかりとし
て使用され注目を集めている(McNeill et al., 2001; 古山, 2002, 2009)。特に、ある内容のまとまりに言及する際に繰り返し生起するジェスチャーはキャッチメントと呼ばれ、ジェスチャーと談話の研究の中心的なものとなっ ている。しかし、これら従来の研究はどのようなタイミングでキャッチメントが生起するかについては語っておらず、その生起要因はいまだ解明されていない。本研究では、ジェスチャーの生起する事例を分析し、ジェスチャー生起の仮説を提案する。また、その仮説を検証するためのコーパスの策定にあたり、音声に付与するタグを提案する。
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【日本認知科学会第27回大会】

タイトル:同期発話の認知メカニズムに関する一考察
著者:伝康晴(千葉大学文学部)
菅野香緒利(元千葉大学文学部)
概要:
会話においては、あいづちや話者交替のタイミングなど、参与者の行動の間に時間的な協応構造がみられる。その最たるものとして、話者間で同一の内容を一音一音同期させて発話する同期発話がある。本研究では、同期発話の背後にある認知メカニズムについて考察する。伝送遅延環境下での対話において半自発的に発現した同期発話の統計的な分析に基づき、同期傾向に影響を与える2つの要因—自己内リズムと局所的調整—を検討する。本研究の結果から、協応現象の一般的なモデルとしての二重モデルの可能性を議論する。
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