第18回LC研究会のご案内

第18回LC研の案内です。

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第18回LC研究会
日時: 2010年10月27日 (水) 15:00〜19:00
場所: 国立国語研究所モニター室
発表者&題目:
1. 佐治伸郎(慶應義塾大学政策・メディア研究科)
言語獲得における複数動詞を用いたイベント認知に関する研究とその応用
2. 前川喜久雄(国立国語研究所)
コーパスを用いた自発音声の研究
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佐治くんは公聴会後、前川さんは公聴会前で、いずれも学位論文の内容についてです。よろしくご参集ください。

タイトル

:言語獲得における複数動詞を用いたイベント認知に関する研究とその応用コーパスを用いた自発音声の研究

発表者

:佐治伸郎

概要


本研究の目的は,母語獲得,L2習得において子ども或いはL2学習者が,どのような過程を経て似たような意味を持つ語同士の意味関係を理解し,これらを運用できるようになるのかを明らかにすることである.具体的には,「モノを運ぶ」事態を多様な仕方で呼び分ける中国語動詞を題材として,成人母語話者や子ども,L2学習者がこれらの動詞をどのように使い分けるのかを実験により調査した.分析では,成人母語話者と,子どもや学習者の運用パターンの相違を比較することにより,それぞれ学習過程の特徴や,その学習の困難に働く要因等を明らかにした.本研究の結果は,語意獲得を考える際,一つの語意の獲得過程のみを考えるのではなく,ある語の意味がそれと似たような意味を持つ複数の語との使い分け全体の中で,どの様に学習されていくのかを調査することの重要性を示している.

タイトル

:コーパスを用いた自発音声の研究

発表者

:前川喜久雄

概要

:自発音声は音声研究の本来的な研究対象であるにもかかわらず、従来の音声学は自発音声の研究を避けて通ってきた。本研究の目標は『日本語話し言葉コーパス』(CSJ)を用いることで、日本語自発音声の研究が可能となることを示すことにある。CSJの設計と実装について説明した後、分節的特徴と韻律的特徴の両面にわたる研究成果を報告する。朗読音声を対象とした従来の音声研究において定説とされてきた分析が自発音声の分析によって覆される事例や、朗読音声の研究では未解決であった問題が自発音声の分析によって解決される事例等を多数提示することによって、CSJのような、豊富なアノテーションの施された自発音声コーパスがあれば、自発音声の音声学的研究が可能となり、音声学の新しい可能性が拓けることを示す。