第54回LC研究会のお知らせ

第54回LC研の案内です。

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第54回LC研究会
日時: 2014年7月18日(金) 17:00〜19:00
場所: 国立情報学研究所20階2005室
発表者: 徳永弘子(東京電機大学)
題目: 共食会話の聞き手に見る協力的なコミュニケーション形成の仕組み
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概要

人にとって継続的な共食行為は,家族の絆や他者との友好な関係を築くことに重要な役割を果たすことが示唆されている.こうした知見は心理学や食育学の領域において,大量の質問紙の統計から得られた成果であるが,本研究では,これを人の行動分析により明らかにすることを目指している.共食会話においては一つしかない口を,他者とのコミュニケーション継続のためと,自分が食べる行為のために使う必要がある.こうした状況において,共食の参与者らは,話す/食べる動作を相互に参照しつつ協力的に振舞っているからこそ,滞りのない共食の場が形成されると仮定した.そこで,3人の共食会話映像を対象に,特に会話の進行を支える役割を担う聞き手に着目し,共食行動を分析する.具体的には会話の進行様式に対し,聞き手の会話への関与の度合いを分類し,関与の度合いに応じて,応答と摂食がどのように調節されているのかを分析した.結果,会話への関与の度合いが高いほど,応答と摂食を隣接させる頻度が高くなり,逆に関与度合いが低いほど,聞き手の摂食はもう一人の応答に共起させたり独立に行われることが明らかになった.これについて,話し手の視線方向との関連を調べたところ,話し手のアテンションが向けられている聞き手は応答と摂食が隣接する頻度が高く,話し手のアテンションが向けられていない聞き手は独立に摂食する傾向が確認された.これにより,聞き手は会話への関与が高く話し手に見られているときは,聞き手性を保持しつつ摂食をすることで会話を維持し,会話への関与が低く話してに見られていない場合には他者に応答を任せたり,自分の応答を必要としないタイミングに摂食することで,コミュニケーションを維持していることが示唆された.共食の場をうまく形成する参与者らの協力的な行動の一端が示された.