第2回LC研究会のご案内

第2回 LC  研究会を以下の予定で開催します。

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第2回LC研究会
日時: 2009年6月24日 (水) 17:00〜19:00
場所: 国立国語研究所417室
発表者: 久保田ひろい (慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科)
題目: イントネーションの創造力:語尾上げ口調はなぜ多用されるか?
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概要

現在英語圏全体で、High Rising Terminal (以下HRT)と呼ばれる「語尾上げ口調」の使用の拡大という言語変化が起きている。例えば、I recently graduated from Northwestern ↗university. (The Devil Wears Prada, 2006)のように、明らかに疑問とは解釈できないような文脈で、yes/no疑問の語尾に見られるイントネーションに似たタイプの上昇調を伴って発せられるのが、この現象の特徴である。従来、<語尾上げ口調>は責任感や自信のなさを示すものとして議論されていたが(Lakoff, 1975)、HRT研究の発展とともに、「確認要求」を行いつつ、話し手の「発言権を保持する」という会話管理の方略として捉えられるようになってきている(Guy et al., 1986)。しかし、多くの先行研究ではHRTの定義が曖昧なままに議論が行われてきた。HRTの伴う発話は「疑問」ではないとされるが、その判断は研究者の直観に頼っている。そこで本研究では、従来の上昇調を伴い「疑問」と解釈される発話とHRTを 伴う発話との比較により、ある発話が「疑問」と判断される要因を分析的に見ていくことで、まず「疑問」を定義する。それにより「疑問」とは解釈されない発話の特性を把握するというアプローチにより、HRTの新奇性を検討した。また、これまで「語り」、「説明」といったテクストタイプとの結束性(Britain, 1992)が指摘されてきたものの、HRTの機能の多様性にはあまり目が向けられないままにその機能が一般化されている。本研究では、個々の事例を参照し、コンテクストとの結束性を検証した上で、各文脈におけるHRTの振る舞いを観察的に分析することで、具体的な文脈に依存したHRTの機能の多様性を明らかにする。