第4回LC研究会のご案内

第4回LC研究会を以下の予定で開催します。

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第4回LC研究会
日時: 2009年8月26日 (水) 16:00〜18:00
場所: 国立国語研究所417室
発表者: 前川喜久雄 (国立国語研究所)
題目: F0 downtrends in spontaneous Japanese:
Corpus-based validation of Pierrehumbert and Beckman’s model
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概要


F0 downtrends in spontaneous Japanese: Corpus-based validation of Pierrehumbert and Beckman’s model

自然言語には音声基本周波数(F0)が発話の時間経過とともに低下する傾向が存在する。東京語(日本語東京方言)の下降傾向についての言語学的観点からの研究としては、Poser(1984)とPierrehumbert & Beckman(1988)がよく知られているが、これらはいずれも純粋な実験音声(朗読音声)だけを対象とした研究であり、さらに被験者数が非常に少ない(Poserは1名、P&Bは4名)。韻律構造は発話の状況に影響をうけるし、個人差も大きい。したがって、CSJ-Coreに記録された多人数(異なりで139名)かつ大量(44時間)の自発音声を素材として、P&Bのモデルを再検討することの意義は大きい。P&Bは東京語の下降傾向の要因として、Catathesis (Downstep), Final lowering, Declination の3者を認定しているが、今回の検討によって、以下の知見を得た。

(1) Final loweringについてはP&Bモデルがほぼそのまま妥当する。
(2) Catathesisについても、P&Bモデルは基本的に妥当であるが、 句末イントネーション(BPM)とBIの関係には修正が必要である。
(3) DeclinationについてP&Bは韻律構造に依存しない時間の関数であるとしているが、CSJ-Coreの分析結果には明白な構造依存性が認められる。この点でP&Bモデルは大幅な修正を要する。

本研究のまとめとして、上記(2)(3)の修正を反映させた東京語の新しい韻律構造モデルを提案する。