第72回LC研究会のお知らせ

第72回LC研の案内です。

第72回LC研究会
日時: 2017年5月26日(金) 17:00〜19:00
場所: 国立情報学研究所2005講義室1
発表者: 坊農真弓(国立情報学研究所/総合研究大学院大学)
題目: 即興手話表現というインターアクション―手話話者の手話と日本語の関係―

概要

我々は2011年から、「日本手話話し言葉コーパス(以下,手話コーパス)」プロジェクトを開始している(Bono et al., 2014; 大杉・坊農, 2015)。本プロジェクトで得られたデータの初歩的な分析の結果、特定の基本的な語彙表現(例:野菜の名前)が手話コミュニティで共有されていない可能性が見えてきた。本研究は、こういった状況の中で手話話者が用いる手法として、「即興手話表現」という考え方を提案する。「即興手話表現」とは、言いたいことがあるがそれを言い当てる表現や単語が思い浮かばないとき、手のモダリティ(hand signing)と、口のモダリティ(mouthing)を組み合わせ、即興的に問題を解決させる相互行為実践である(坊農, 印刷中)。本発表では、3つの事例分析を紹介するが、これらは(1) 手の非流暢さから観察できる修復の自己開始、(2) 修復の操作に隣接ペアが含まれる、(3) 修復開始前と修復中と修復終了後のそれぞれの視線のふるまい、(4) 語彙表現の選ばれ方、という4つの観点で共通している。これらの事例を分析するためには、手話話者が置かれてきた言語環境についての知識が必須となる。1933年から1993年までおよそ60年間続いた聴覚障害児教育における手話使用の禁止の風潮(脇中, 2009)などを解説し、手話話者の手話と日本語の関係について考える。
本発表は坊農(2017)を土台にデータを追加して実施する。

坊農真弓(2017) 「即興手話表現というインターアクション―手話話者の手話と日本語の関係―」『日本語学』2017年4月特大号(インターアクションの科学), 通巻465号(第36巻4号), pp. 46-58. 明治書院