オンライン・シンポジウム「ことば・認知・インタラクション8」


「ことば・認知・インタラクション8」


本シンポジウムは、2020年3月に開催を予定していた公開シンポジウムをオンラインで開催するものです。

趣旨

会話は、ことばと認知とインタラクションが出会う場です。私たちのプロジェクトでは、言語学・心理学・会話分析・認知科学・情報工学など、さまざまなアプローチから会話や話し言葉の諸現象に関する研究を行なっています。今回は2013年から数えて8回目の開催となります。今回は、社会統語論という新たな切り口から「文法」にアプローチされている吉川正人先生と、アフリカ狩猟採集民のフィールド調査から子どもの社会化まで「相互行為の人類学」という立場で研究されている高田明先生を招待講演にお招きし、みなさんと共に議論する場を設けました。多くの方の参加をお待ちしております。



招待講演1内容

  • タイトル:傀儡の文法論:ヒトの創造性に寄生する社会的ウイルス
  • 講師:吉川正人(慶應義塾大学)
  • 要旨:文法は生得的か否か。この、文法に関する「生まれか育ちか (“nature vs nurture”)」の議論は今なお続く言語学の一大論争であるが、本講演では、この論争に対し一つの決着をもたらすべく、「ヒトの持つ創造的能力に寄生し伝承される社会的構築物としての文法」という文法観を提示する。文法の生得論者が主張するのは具体的な文法規則というよりはそれを操ることを可能にする基本的な能力 (e.g., 併合・再帰) の生得性であるが、これを最大限肯定したとしても、即ち「文法が生得的である」という結論には必ずしも至らない。むしろ、文法とは、コミュニティに共有された慣習という意味で本質的に社会的な構築物であり、それが謂わば要素の組み合わせや類推などを通して創造的に表現を作り出すヒトの能力を「利用」していると考えるべきである。本講演では、このような文法観を支持すべき根拠を複数提示しながら、文法の生得的性質と社会的性質を整理し全体像を素描していく。

招待講演2内容

  • タイトル:日本における言語社会化と「責任」の文化的形成
  • 講師:高田明(京都大学)
  • 要旨:言語社会化論は、子どもは成長の過程で、言語以外を含む様々な記号論的資源を用いることで、状況に応じた適切な行為を行うようになっていくというパースペクティブを提示している。こうしたパースペクティブに立脚して、発表者らは、日本/日本語における言語社会化が生じる過程について、「お腹の赤ちゃん」をめぐる参与枠組み、指さしによる注意の共有、行為指示をめぐるコミュニケーション、ものの移動による環境の更新、感情語彙による道徳性の社会化、物語りによる注意、感情、道徳性の組織化といった研究を推進してきた(高田 近刊)。本発表では、そうした研究の成果の一部を紹介する。こうした研究は、文化的に枠づけられた相互行為の中で子どもが状況に応じて適切に振る舞うための時間的・空間的な幅を広げていく過程を解明し、その発話共同体を特徴付ける生活世界がどのように生産、維持、変革されるかについての私たちの理解を深めることに貢献する。

講演1内容

  • タイトル:Reference in conversation
  • 講師:Tsuyoshi Ono (University of Alberta)
  • 要旨:Our examination of everyday interactions highlights the interactional and thus temporal nature of reference in human interaction. Specifically, we find:
    1. As interaction unfolds, the specificity of what is being talking about (i.e., reference) constantly shifts: from general types to specific objects and from specific objects to general types.
    2. A speaker’s less-than-specific referents, however inexact they may be, are often then ‘reified’ as referents by the recipient.
    Our data thus show that reference is a profoundly interactional phenomenon – temporal, often non-discrete and non-exact, constantly negotiated, and continually emergent.

    ※発表は日本語で行ないます。


講演2内容

  • タイトル:反応表現の相互行為上の機能と韻律的バリエーション:英語reallyを例に
  • 講師:横森大輔(九州大学)
  • 要旨:会話データを用いた言語研究の強みの一つは個々の言語表現の相互行為上の働きを記述できることにあり、そのような記述が特に期待される研究対象として「あいづち」をはじめとする様々な反応表現がある。これまで反応表現の研究は数多く行われているが、語彙や構文ごと(例:「はい」「うん」)に特徴の記述が行われる傾向が強く、韻律上の特徴を考慮した研究は必ずしも多くない。本研究では、英語会話において情報伝達(informing)への反応として用いられる談話標識reallyに着目し、上昇調で産出された場合と下降調で産出された場合に指標されるスタンスの違いとそれによって成し遂げられる相互行為上の働きの違いを、会話分析の手法を用いて明らかにする。分析には米国における友人・家族間の電話会話の音声を集めたCallHomeコーパスを用いる。分析結果として、上昇調の”Really?”と下降調の”Really.”では、いずれも先行発話で伝えられた情報の真性に焦点化するという共通点がある一方、その情報の受け止め方のスタンスに微細な違いがあり、それが相互行為の展開の違いとして現れていることを示す。

「ことば・認知・インタラクション8」


本シンポジウムは中止となりました。

趣旨

会話は、ことばと認知とインタラクションが出会う場です。私たちのプロジェクトでは、言語学・心理学・会話分析・認知科学・情報工学など、さまざまなアプローチから会話や話し言葉の諸現象に関する研究を行なっています。今回は2013年から数えて8回目の開催となります。今回は、社会統語論という新たな切り口から「文法」にアプローチされている吉川正人先生と、アフリカ狩猟採集民のフィールド調査から子どもの社会化まで「相互行為の人類学」という立場で研究されている高田明先生を招待講演にお招きし、みなさんと共に議論する場を設けました。多くの方の参加をお待ちしております。



招待講演1内容

  • タイトル:傀儡の文法論:ヒトの創造性に寄生する社会的ウイルス
  • 講師:吉川正人(慶應義塾大学)
  • 要旨:文法は生得的か否か。この、文法に関する「生まれか育ちか (“nature vs nurture”)」の議論は今なお続く言語学の一大論争であるが、本講演では、この論争に対し一つの決着をもたらすべく、「ヒトの持つ創造的能力に寄生し伝承される社会的構築物としての文法」という文法観を提示する。文法の生得論者が主張するのは具体的な文法規則というよりはそれを操ることを可能にする基本的な能力 (e.g., 併合・再帰) の生得性であるが、これを最大限肯定したとしても、即ち「文法が生得的である」という結論には必ずしも至らない。むしろ、文法とは、コミュニティに共有された慣習という意味で本質的に社会的な構築物であり、それが謂わば要素の組み合わせや類推などを通して創造的に表現を作り出すヒトの能力を「利用」していると考えるべきである。本講演では、このような文法観を支持すべき根拠を複数提示しながら、文法の生得的性質と社会的性質を整理し全体像を素描していく。

招待講演2内容

  • タイトル:日本における言語社会化と「責任」の文化的形成
  • 講師:高田明(京都大学)
  • 要旨:言語社会化論は、子どもは成長の過程で、言語以外を含む様々な記号論的資源を用いることで、状況に応じた適切な行為を行うようになっていくというパースペクティブを提示している。こうしたパースペクティブに立脚して、発表者らは、日本/日本語における言語社会化が生じる過程について、「お腹の赤ちゃん」をめぐる参与枠組み、指さしによる注意の共有、行為指示をめぐるコミュニケーション、ものの移動による環境の更新、感情語彙による道徳性の社会化、物語りによる注意、感情、道徳性の組織化といった研究を推進してきた(高田 近刊)。本発表では、そうした研究の成果の一部を紹介する。こうした研究は、文化的に枠づけられた相互行為の中で子どもが状況に応じて適切に振る舞うための時間的・空間的な幅を広げていく過程を解明し、その発話共同体を特徴付ける生活世界がどのように生産、維持、変革されるかについての私たちの理解を深めることに貢献する。

講演1内容

  • タイトル:Reference in conversation
  • 講師:Tsuyoshi Ono (University of Alberta)
  • 要旨:Our examination of everyday interactions highlights the interactional and thus temporal nature of reference in human interaction. Specifically, we find:
    1. As interaction unfolds, the specificity of what is being talking about (i.e., reference) constantly shifts: from general types to specific objects and from specific objects to general types.
    2. A speaker’s less-than-specific referents, however inexact they may be, are often then ‘reified’ as referents by the recipient.
    Our data thus show that reference is a profoundly interactional phenomenon – temporal, often non-discrete and non-exact, constantly negotiated, and continually emergent.

    ※発表は日本語で行ないます。


講演2内容

  • タイトル:反応表現の相互行為上の機能と韻律的バリエーション:英語reallyを例に
  • 講師:横森大輔(九州大学)
  • 要旨:会話データを用いた言語研究の強みの一つは個々の言語表現の相互行為上の働きを記述できることにあり、そのような記述が特に期待される研究対象として「あいづち」をはじめとする様々な反応表現がある。これまで反応表現の研究は数多く行われているが、語彙や構文ごと(例:「はい」「うん」)に特徴の記述が行われる傾向が強く、韻律上の特徴を考慮した研究は必ずしも多くない。本研究では、英語会話において情報伝達(informing)への反応として用いられる談話標識reallyに着目し、上昇調で産出された場合と下降調で産出された場合に指標されるスタンスの違いとそれによって成し遂げられる相互行為上の働きの違いを、会話分析の手法を用いて明らかにする。分析には米国における友人・家族間の電話会話の音声を集めたCallHomeコーパスを用いる。分析結果として、上昇調の”Really?”と下降調の”Really.”では、いずれも先行発話で伝えられた情報の真性に焦点化するという共通点がある一方、その情報の受け止め方のスタンスに微細な違いがあり、それが相互行為の展開の違いとして現れていることを示す。

第86回LC研の案内です。

第86回LC研究会
日時: 2019年9月26日(木) 17:00〜19:00
場所: 国立情報学研究所 20階2005講義室1
発表者: 梅村弥生(千葉大学)
題目: 着付け指導にみられる環境の構造化:コ系指示詞とポインティングの利用による

概要

本研究では、着付けの指導場面のデータを用いて、参与者らが説明や質問の際に用いる発話や身振りを会話分析の視点から分析する。具体的には、「これ」や「ここ」などコ系の直示(deixis)とその際に行う指し示し(pointing gesture)や身体の配置に着目し、それらが着物の部分の名称の知識や着こなしの技術が伝達されるなかで、どのように利用されているかということを明らかにする。着付けの指導中には、双方の視界にないものが「ここ」や「こう」という発話によって指し示されるという現象が見受けられる。この場合は、双方の視界にないものの、それぞれの身体で指し示しの対象を知覚することによって、「これ」の意味が理解され共有されている。本研究は、相互行為を通して上の3つの要素が、どのように組み合わさることから双方のアクセスが可能となり、着付けの技術の伝達が組織されていくのかということを明らかにする。

第85回LC研の案内です。

第85回LC研究会
日時: 2019年8月8日(木) 17:00〜19:00
場所: 国立情報学研究所 20階2001A実習室1
発表者: 門田圭祐(早稲田大学)
題目: 手渡しはどのように始まるのか?:物の手渡しにおける相互行為の微視的分析

概要

本発表では、会話の中で行われる物の手渡しにおいて、人々が行っている発話・身体動作の微視的分析の結果について報告する。物を手渡すことは、日常生活の様々な場面で行われるやりとりである。この際、人々は様々な相互行為上の課題に対処していると考えられる。たとえば、手渡しを始めることや、渡し手/受け取り手を選ぶことである。本発表では、人々の実生活中のやりとりを収録した映像データから集めた手渡しの事例について、そこでなされた発話や身体動作の調整を分析することにより、人々が上述の2つの課題に対処するために用いているやり方を明らかにする。とくに、物を受け取る側のふるまいによって手渡しが開始されていると考えられる事例について、人々の発話や身体動作がどのように組み立てられているのか議論する。


EIL2019 & LCI-7 Joint International Symposium:

Embodied Interaction and Linguistics 2019

Language, Cognition, and Interaction 7


Overview

Face-to-face interaction in physical environments is the most basic form of language use and should thus be the primary data source for linguistic and interaction studies. Inviting leading scholars of the field from overseas and Japan, this international symposium aims to uncover how people use their bodies and language in various kinds of real-world situations. Since the symposium is also intended to be the opportunity for all participants to share and exchange ideas, anyone interested is welcome to participate.



Invited Talk 1

  • How syntax emerges in embodied interaction
  • Speaker: Leelo Keevallik (Linköping University)
  • Abstract: Language is but one resource of sense-making and action formation. As interacting human beings we cannot merely rely on our earlier experiences of lexicon and grammar, because this abstracted knowledge does not in itself guarantee mutual understanding here and now. A more realistic view on the achievement of intersubjectivity is to be found in the complex interplay between the embodied language, body movements, and the material environment. In this paper I will use data from contexts where bodies are in focus, pilates and dance classes, to show how syntactic structure emerges step-by-step in teacher talk. It does so reflexively to the students’ moving bodies, while it simultaneously directs the students through the partially known moves. The teacher times syntactic coordination, phrasal constructions and occasionally even morphological suffixes to the ongoing physical exercise. In contrast to formal theories that consider grammar as a device of coherent expression of pre-planned propositions, this study argues that syntactic structure emerges as part of practical action across participants and modalities.

Invited Talk 2

  • Interactive coordination of vocalization and movement in “rock-paper-scissors” game to synchronize action
  • Speaker: Hiromichi Hosoma (University of Shiga Prefecture)
  • Abstract: In collaborative work, we often inform the timing of the action each other to accomplish the synchronization of our behavior. Here we describe the collaborative process of “rock-paper-scissors” game where multiple people synchronize their fist movements.15 pairs (24 women, 6 men) participated to play janken without a referee. Results showed that the timing of the motion often deviated in the first half of the janken: all participants used the call “Saisho wa guu (Rock for the first)”, and the up and down direction of movements or the timing of movements were shifted among participants at the beginning of the call. However, participants synchronized their movements within a few strokes by waiting for the stroke of the opponent at the start or the end of the stroke, or by changing the length of the distance of the stroke. In addition, the phoneme structure of the utterances contributed for providing the timing of the waiting to adjust a time frame of these strokes. In all, results suggest that players of janken accomplish the synchrony of their arm movements using the time structure of their utterance and strokes in the early stages of play.

Presentation 1

  • How to instruct the way of seeing and understanding the phenomenon: A case study using multimodal and narrative analyses
  • Speaker: Kaori Hata (Osaka University)
  • Abstract: The paper aims to illustrate how the combination of multimodal and narrative analyses works effectively by examining an interaction between parents and their son in a scientific experiment. In the experiment, I pay attention to how parents as experts attract their son’s attention to the particular way of seeing and understanding a phenomenon by using their bodily movements and verbal instructions. For the purpose of this study, data taken from an episode in the Corpus of Everyday Japanese Conversation, constructed by NINJAL, is analysed. It is a family discourse in which parents instruct their son to complete his science homework. It is observed that the father’s bodily movements, verbal instructions, mother’s peripheral participation roles, the younger brother’s attitude, and parents’ collaborative instructions converge into directing the son to find the specific ways of seeing the phenomenon in the experiment and guide him towards the ‘correct’ answer provided in the textbook. In conclusion, I ague for a narrative analysis in a situated activity.

Presentation 2

  • Instructive bodily demonstrations situated in Karate lessons
  • Speaker: Seiji Nashio (Hiroshima University)
  • Abstract: The purpose of this presentation is to examine interactive bodily instructions in child-oriented Karate lessons through a multimodal analysis. The analysis specifically focuses on episodes of instructive demonstrations. That is, the primacy instructor of the Karate lesson, Shihan, interrupts a group or pair practice to single out the target trainee that requires instruction to correct his/her bodily motions, and demonstrates bodily interaction with other instructors or trainees before the target trainee. The result shows that 1) these interactive demonstrations basically emphasize the importance of practice with conscious awareness of his/her (imaginary) opponent’s motion to the trainee, even during a form practice with no opponent; 2) the demonstrations are interactively organized by the Shihan’s multimodal action, which requires the spontaneous instructions to the partner to perform; and 3) the insertion of the demonstration is successfully accomplished by not only the main participants of the instructive demonstration, but also other trainees and instructors around them, that are conventionally situated in the Karate lesson.

第84回LC研の案内です。

第84回LC研究会
日時: 2019年2月27日(水) 17:00〜19:00
場所: 国立情報学研究所 15階1512会議室
発表者: 須永将史(立教大学)
題目: 「痛み」の観察可能性について

概要

本発表では、在宅医療マッサージにおける相互行為を対象とする。在宅医療マッサージでは、施術者と患者が会話しながらマッサージによる施術が進行する。施術者と患者は施術のなかで、さまざまなことがらを会話のトピックとしてあつかう。患者の病状・体調について話をおこなうこともあれば、施術の前日に患者がどのような一日を送っていたかなど、トピックは多岐に渡る。さまざまなトピックが展開するなか、本発表が注目するのは、とりわけ患者の「痛み」について施術者が質問するそのやり方である。「痛み」に関する質問は、患者の身体に触れながらなされることもあれば、患者の身体に触れずになされることもある。問題は、痛みに関する質問が施術者からなされるとき、どのような相互行為的環境にありながらその質問がなされているのか、である。本発表では、痛みが問われるそのやり方を、質問のデザインという観点からあきらかにする。

第83回LC研の案内です。

第83回LC研究会
日時: 2018年12月27日(木) 17:00〜19:00
場所: 国立情報学研究所 1213大学院講義室2
発表者: 壹岐朔巳(総合研究大学院大学)
題目: ニホンザルの闘争遊びインタラクションにおける行動協調メカニズム

概要

ヒト同士の社会的インタラクション場面における行動協調は、体の向け合いや相互注視といった時空間的・行動的な身体配置に支えられることによって実現される。これらの身体配置が有する行動協調上の機能が、ヒトという種に特異的なものなのか、あるいはヒト以外の種にも共有されているものなのかは、未だ明らかになっていない。本発表では、野生のニホンザルがおこなう闘争遊び(闘いごっこ遊び)を対象に、これらの身体化された行動協調メカニズムの存在を検証する。さらに、可能であれば、優位個体に対する接近/回避の場面や、採食中に食事の手を一時的に止めて行われるビジランス(警戒)場面の映像データをもとに、ニホンザルの社会的なインタラクションにおける身体配置の重要性について議論する。

第82回LC研の案内です。

第82回LC研究会
日時: 2018年11月2日(金) 17:00〜19:00
場所: 国立情報学研究所 12階 1213大学院講義室2
発表者: 落合哉人(筑波大学大学院人文社会科学研究科)
題目: LINEテキストチャットにおける分析単位の認定と接続表現の使用傾向について

概要

本発表は、LINEテキストチャットにおいて展開される言語使用の相対的な位置づけについて議論を行うものである。LINEに関する近年の研究では、そこでのやりとりと、対人場面やケータイメールにおけるやりとりとの間の共通点・相違点が指摘されているが、「そもそもどのような分析単位でLINEと他の媒体を比較すべきか」という議論に乏しい。これを踏まえ本発表では、実際に収集したデータのうち、特に「発話が分割される場面」に着目して観察することで、①そのような場面が3種類の様式に分けて捉えられること、②それぞれの様式に応じて「発信」「(話し手としての)役割」「話題」といった分析の単位を抽出できること、の2点を論じる。さらに、議論を踏まえた分析の一例としてLINE・対人場面・ケータイメールの3者での雑談における接続表現(接続詞・接続助詞)の使用傾向を取り上げ、語の使用傾向の異なりが媒体ごとの言語使用のあり方の異なりを反映していることを見る。

第81回LC研の案内です。

第81回LC研究会
日時: 2018年9月17日(月) 17:00〜19:00
場所: 国立情報学研究所 1213大学院講義室2
発表者: 甲賀崇史(明和学園短期大学/早稲田大学大学院)
題目: 幼児期における靴履き行動の発達的研究

概要

子どもの発達は、すべて生活を基礎に置いている。生活という営みはあまりにも日常化されているが、そこで子どもは一体何をしているのだろうか。そしてまた、子どもはどのような過程とともに、自らの生活を作り出していくのだろうか。本発表では、保育園と幼稚園で子どもが靴を履く場面の映像データを紹介する。靴の着脱という生活習慣行動の観察を通して、子どもが生活を構成し、あるいは再構成していくプロセスを、物理的環境や社会的他者とのかかわりを含めて議論する。

第80回LC研の案内です。

第80回LC研究会
日時: 2018年5月16日(水) 17:00〜19:00
場所: 国立情報学研究所 1213大学院講義室2
発表者: 居關友里子(国立国語研究所)
題目: 「データを収録する活動」と「収録対象となる活動」のやりくり

概要

人々の日常における言語使用や身体的振る舞いについて明らかにするために、近年音声・映像データの収録が盛んに行われている。この際に、会話を始めとした「収録対象となっている活動」と、「データを収録するという活動」はどのような関係を成しているのだろうか。本発表では現在構築中の「日本語日常会話コーパス(国立国語研究所)」のデータ収録の中で生じていた、収録終了の際に打たれるカチンコ(収録を行った複数メディアの同期を取るための合図として手を叩く振る舞い)とその前後における収録対象者の振る舞いを手がかりに考察を行う。

第79回LC研の案内です。

第79回LC研究会
日時: 2018年2月28日(水) 10:30〜12:30
場所: 国立情報学研究所 2001A実習室1
発表者: 砂川千穂(日本学術振興会/国立情報学研究所)
題目: Interactional scaffolding: 遠隔家族会話における参与構造

概要

コミュニケーションツールの発展により、遠隔地間でも容易にお互いの顔をみてやりとりが出来るようになった。こうした新しいツールとコミュニケーションについては、主に技術的評価や可能性の側面に関しては様々な議論が進められているが、新しいツールの導入によって参与者のコミュニケーションの習慣・社会慣習がどのように調整・交渉されるのかはまだ明らかになっていない。こうした背景に留意し、本研究では、日本やアメリカに在住し、スカイプビデオを日常的に使用している遠隔地間の三世代家族会話を分析し、参与者がスカイプによる視野的・空間的限界を補うためどのような資源が利用されているのかを解明する。例えば食事、お店屋さんごっこ、アルバム鑑賞といった、いわば典型的な家族の協働作業も、スカイプ越しに行われる時には、共在空間でそれらを行う時には想像しないような困難にであうことがある。例えば子供の食事マナーをカメラ越しに注意したり、見えにくい写真に対して感想をいうといった場合である。こうした困難を解消し、相互行為を達成するために、参与者がどのような足場(scaffolding)を提供しあっているのかを明らかにしていきたい。

第78回LC研の案内です。

第78回LC研究会
日時: 2018年1月26日(金) 17:00〜19:00
場所: 国立情報学研究所 12階1213室(講義室2)
発表者: 須永将史(立教大学)
題目: 生態心理学とエスノメソドロジーにおける視覚についての論争

概要

本研究は、1998年に、Theory & psychology誌において行われたJ.J.ギブソンの「視覚」についての論争を扱う。本論争はWes SharrockおよびJeff Coulterらエスノメソドロジストと、生態心理学者あるいは認知心理学者との間で交わされた論争であり、’On What We Can See’と題された論文におけるギブソン批判を皮切りに開始された。これらの論争の整理を試みることで、(1)生態心理学とエスノメソドロジーではどのように「視覚」の扱い方が異なるのかを整理する。また、(2)エスノメソドロジストがギブソンの議論をどのように受け止め、どのように自分たちの議論において「視覚」を扱っていくべきと考えているのか、明確化する。以上の議論を踏まえ、可能であれば、視覚にかかわる相互行為場面での分析もおこなう。


「ことば・認知・インタラクション6」


趣旨

会話は、ことばと認知とインタラクションが出会う場です。私たちのプロジェクトでは、言語学・心理学・会話分析・認知科学・情報工学など、さまざまなアプローチから会話や話し言葉の諸現象に関する研究を行なっています。今回は2013年から数えて6回目の開催となります。今回は、新たな試みとして、「言語・相互行為研究の新展開:多様な場面の会話データから見えてくること」と題したパネル討論を設けることにしました。多彩なパネリストとともに活発に議論したいと思います。多くの方の参加をお待ちしております。



講演1内容

  • タイトル:援助はどのように行われるか:サービス場面の相互行為分析
  • 講師:森本郁代(関西学院大学)
  • 要旨:近年、「今直面している問題を解決するための援助の求めとそれに対する他者の援助もしくは援助の申し出(recruitment for assistance)」という観点から、「依頼」と「申し出」を、連続的な行為として捉える研究が見られる(Kendrick and Drew, 2014, 2016)。これらの研究の多くは、主に援助の求めが、それぞれの連鎖環境や物理的環境の中で、どのような言語的、非言語的資源を用いて組み立てられ、認識可能となっているのかに焦点を当てている(Kendrick and Drew, 2016; Drew and Kendrick, 2017)。本報告では、サービス場面におけるrecruitment for assistanceの連鎖に焦点を当て、特に、援助の申し出が明示的に行われない場面において、援助がどのように行われるのかを記述するとともに、そうした場面での援助の仕方と援助を行う側のアイデンティティとの関係について議論する。

講演2内容

  • タイトル:会話する動機:職務でのコミュニケーションの分析に向けて
  • 講師:高梨克也(京都大学)
  • 要旨:さまざまな日常生活場面で「自然に生起する会話」を分析する際の重要な注意点の一つは、各参与者が「会話に参与する動機」を持っているはずだということである。この「動機」という観点について、本発表では、多職種ミーティングやコンサルテーションといった、職務としての側面が明確なコミュニケーション場面を対象として、それぞれの職務に関わる利害関心や権利義務などの観点からの分析を行うことを通じて、会話への参与動機という観点から会話を特徴づける方法について模索したい。

講演3内容

  • タイトル:同定・確認作業における「見ること」の相互行為的基盤
  • 講師:黒嶋智美(玉川大学)
  • 要旨:本発表では、外科手術における外科医の血管同定作業や、工作における確認作業など、視覚がその構造上、資源となっている相互行為を分析することで、「見ること」の参与者に対する帰属可能性(西阪, 2016)が、どのようにこれらの相互行為を支える基盤となっているのかを明らかにする。対象物を同定したり確認したりする際、行為者の視覚は、言語や身体、道具、他の知覚などによって示され、行為者に固有なものとして扱われる。そのため、これらの行為の受け手にも視覚による同じ対象物を評価することが適切となって相互行為が展開される。このような行為連鎖の記述によって、概念的に多様である「見ること」が、同定や確認を実践上の目的に合わせて行っている参与者にとって、どのような経験として立ち現われているのかについて議論を試みる。

第77回LC研の案内です。

第77回LC研究会
日時: 2017年12月26日(火) 17:00〜19:00
場所: 国立情報学研究所 12階1213室(講義室2)
発表者: 清水大地(東京大学)
題目: 上演芸術における他者との相互作用を通じたパフォーマンスの変化

概要

ダンスや演劇等の上演芸術の中でも,特に即興的にパフォーマンスが営まれていく活動領域では,パフォーマーは共演者や観客,音楽といった様々な要素との豊かな関わり合いを通して魅力的なパフォーマンスを構築・披露していく。特に顕著であることとして,パフォーマーが共演者の行動に応じて自身の行動を変化させ,この変化した行動に応じて再び共演者も行動を変化させていく,互いに依拠・発展し合う相互作用が生じうることが示唆されている(e.g., Walton et al., 2015)。
本研究ではブレイクダンスのバトル・サイファーという競争的・協働的な性質を有するパフォーマンス場面を取り上げ,その中で熟達したダンサー達が互いにどのように関わり,パフォーマンスを変化させていくのか,その相互作用の様相に関する検討を試みた。例えばダンサー同士の距離やパフォーマンスの様相を顕著に示す指標としての頭部の位置データ等に着目した検討を行っている。結果として,距離に関して一定のパターンが見られること,それが時間経過によって動的に変化していくこと等が現在のところ示唆されている。

第76回LC研の案内です。

第76回LC研究会
日時: 2017年11月13日(月) 17:00〜19:00
場所: 国立情報学研究所 1213大学院講義室2
発表者: 川口一画(筑波大学)
題目: コミュニケーションロボットによる非言語的表現の効果に関する研究

概要

人間と類似した身体性を持ったロボットは、既存のメディアでは困難であった非言語的表現の提示が可能である点を特徴とする。本研究は、コミュニケーションロボットが提示する非言語的表現と、そこから誘起される人間の行為に着目し、ロボットによる非言語的表現の効果を評価することを目的とする。本発表では、博物館での鑑賞支援を目的としたガイドロボットにおいて注意獲得のための「沈黙・言い直し(pause & restart)」、および身体配置を調整するための「身体ねじり(body torque)」という方策の効果検証を行った研究事例について発表を行う。

第75回LC研の案内です。

第75回LC研究会
日時: 2017年10月13日(金) 17:00〜19:00
場所: 国立国語研究所 3Fセミナー室
発表者: 川端良子(国立国語研究所/千葉大学)
題目: 地図課題対話における条件表現の使用傾向

概要

本研究は、日本語の条件表現 TA、TO、BA、NARA の用法の違いについて、日本語地図課題対話を用いて分析し、その使用傾向からそれぞれの特徴を明らかにすることを試みた。分析の結果、条件節の内容が「行為」に関する場合、TARA、TO、BA で主節の内容に明確な使用傾向の違いが見られた。具体的には、TARA条件節の後の主節にはTARAで提示された行為が終った後に行う行為が提示され、TO条件節の後の主節には、条件節で提示された行為の実行の結果が提示され、BA条件節の後の主節には、条件節で提示された行為が正しいかどうか評価する内容が出現する傾向があった。この原因は、発話者が会話に導入するフレームワークの違いによるものとし、各条件節の使用による会話機能を検討する。

第74回LC研の案内です。

第74回LC研究会
日時: 2017年8月25日(金) 17:00〜19:00
場所: 国立情報学研究所1213室
発表者: 天谷晴香(国立国語研究所)
題目: 他者への化粧行為と雑談

概要

他者への化粧行為において、行為者は予想外の出来の悪さに悩まされる。素人の化粧行為者が自分の母親に化粧しているビデオデータから、試行錯誤や偶然のチャンスを通じて、望ましくない出来を回復していく事例を分析する。途中、会話と行為の境界の不一致から、出来について被行為者に伝達できない様子や、あるきっかけから回復への糸口が見つかる瞬間が分析によって明らかにされた。

第73回LC研の案内です。

第73回LC研究会
日時: 2017年7月7日(金) 17:00〜19:00
場所: 国立情報学研究所1213室
発表者: 堀内ふみ野(慶應義塾大学)
題目: 会話に特有の「また」の生起パターンと使用環境からの動機づけ

概要

日本語の副詞「また」は、典型的には「また道に迷った」のように動詞を修飾して行為の繰り返しを表す。しかし、日常会話では、そうした典型的な用法に加えて「その焼豚がまたおいしいんだけどさ」のように形容(動)詞と共起して話者の感情やスタンスを表す用法が頻繁に観察される。この用法の「また」は、新聞のような書き言葉には見られない会話特有のものである。このように、「また」という一つの語彙でも異なるコミュニケーション環境では異なる使い方がなされ、片方の環境で頻繁に生起する用法がもう一方の環境ではほとんど生起しないという分布のばらつきが見られる。こうしたばらつきは、どのような要因で生じるのだろうか。
本研究では、会話に特有の「また」の実例を観察し、その生起文脈、機能、音韻的な特性を新聞での用法と比較しながら分析する。その上で、それらの特性が「会話」というコミュニケーション形態の特性に動機づけられていることを論じる。分析を通して、言語使用の場における文脈的・環境的要因を取り込みながら、「また」を含む文法的なパターンがボトムアップ的に形成されていくプロセスを探っていく。
本発表は、社会言語科学会第39回大会における口頭発表を土台に、データを追加して実施する。

第72回LC研の案内です。

第72回LC研究会
日時: 2017年5月26日(金) 17:00〜19:00
場所: 国立情報学研究所2005講義室1
発表者: 坊農真弓(国立情報学研究所/総合研究大学院大学)
題目: 即興手話表現というインターアクション―手話話者の手話と日本語の関係―

概要

我々は2011年から、「日本手話話し言葉コーパス(以下,手話コーパス)」プロジェクトを開始している(Bono et al., 2014; 大杉・坊農, 2015)。本プロジェクトで得られたデータの初歩的な分析の結果、特定の基本的な語彙表現(例:野菜の名前)が手話コミュニティで共有されていない可能性が見えてきた。本研究は、こういった状況の中で手話話者が用いる手法として、「即興手話表現」という考え方を提案する。「即興手話表現」とは、言いたいことがあるがそれを言い当てる表現や単語が思い浮かばないとき、手のモダリティ(hand signing)と、口のモダリティ(mouthing)を組み合わせ、即興的に問題を解決させる相互行為実践である(坊農, 印刷中)。本発表では、3つの事例分析を紹介するが、これらは(1) 手の非流暢さから観察できる修復の自己開始、(2) 修復の操作に隣接ペアが含まれる、(3) 修復開始前と修復中と修復終了後のそれぞれの視線のふるまい、(4) 語彙表現の選ばれ方、という4つの観点で共通している。これらの事例を分析するためには、手話話者が置かれてきた言語環境についての知識が必須となる。1933年から1993年までおよそ60年間続いた聴覚障害児教育における手話使用の禁止の風潮(脇中, 2009)などを解説し、手話話者の手話と日本語の関係について考える。
本発表は坊農(2017)を土台にデータを追加して実施する。

坊農真弓(2017) 「即興手話表現というインターアクション―手話話者の手話と日本語の関係―」『日本語学』2017年4月特大号(インターアクションの科学), 通巻465号(第36巻4号), pp. 46-58. 明治書院

第71回LC研の案内です。

第71回LC研究会
日時: 2017年3月30日(木) 17:00〜19:00
場所: 国立情報学研究所1213室
発表者: 岡田智裕(総合研究大学院大学)
題目: まだ語彙化されていない対象物の伝達手法−食べ物関連の手話会話に着目して−

概要

手話には地域差が見られる手話表現があることが報告されている(NHK放送文化調査研究所放送研究部 1988; 大杉 2012)。また、大杉・坊農(2015)では、群馬と奈良で「たまねぎ」「ジャガイモ」「人参」の手話表現の共有の度合が低いと報告している。群馬と奈良、それぞれの食べ物関連の手話表現の共有度が低いということは、その手話表現が地域差というよりは個人差の手話表現であることから、食べ物関連の手話表現がまだ語彙化されていないように読み取れる。ろう者は日常的に手話でやり取りしているにも関わらず、まだ語彙化されていない食べ物の手話表現がある。
では、その語彙化されておらず個人差といえる手話表現がどのような伝達手法で相手に伝えるのであろうか。その伝達手法を探れば、その語彙化されておらず個人差といえる手話表現において主要となる伝達手法が何であるかの解明に結びつくことができる。
手話には、日本語の借用としての指文字や、日本語の発音に伴う口の動きのマウジング、文字を空間に綴る行為の空書(佐々木・渡辺 1984)などの表現モダリティによる伝達手法が挙げられる。また、口の動きにはマウジングだけでなく、手話独自の口型のマウスジェスチャー(岡・赤堀 2011)がある。その伝達手法については、手話表現と日本語由来の表現モダリティ(マウジング、指文字)の組み合わせ、あるいは伝達する対象物の意味に近い手話表現で代替する等の「即興手話表現(Improvisational Signing: ImS)」が提唱されている(坊農 2017)。手話会話における口の動き(マウジングとマウスジェスチャー)では、イギリス手話では51%が、オランダ手話では39%が、スウェーデン手話では57%がマウジングを産出していた上、どの手話もマウジングが最も多かったと報告している(Crasborn et al. 2008)。
本発表では、「日本手話話し言葉コーパス」(Bono et al. 2014)の映像データを用いて、手話会話における伝達手段としてマウジングの活用が重要であるという仮説の検証を試みる。

参考文献
Bono, Mayumi, Kouhei Kikuchi, Paul Cibulka, and Yutaka Osugi. 2014. “A Colloquial Corpus of Japanese Sign Language: Linguistic Resources for Observing Sign Language Conversations.” In LREC 2014, 1898–1904.
坊農真弓. 2017. “手話相互行為における即興手話表現:修復の連鎖の観点から.” 社会言語科学会 19 (2). 印刷中
Crasborn, Onno, Els van der Kooij, Dafydd Waters, Bencie Woll, and Johanna Mesch. 2008. “Frequency Distribution and Spreading Behavior of Different Types of Mouth Actions in Three Sign Languages.” Sign Language and Linguistics 11 (1): 45–67. doi:10.1075/sl.
NHK放送文化調査研究所放送研究部. 1988. “手話地域差調査報告書.”
岡典栄・赤堀仁美. 2011. 文法が基礎からわかる日本手話のしくみ. 大修館書店.
大杉豊. 2012. “日本の手話における語彙共通化現象.” 手話学研究 21: 15–24.
大杉豊・坊農真弓. 2015. “手話人文学の構築に向けて(2) 手話言語コーパスプロジェクト.” In 手話・言語・コミュニケーション No.2, edited by 日本手話研究所, 99–136. 文理閣.
佐々木正人・渡辺章. 1984. “「空書」行動の文化的起源:漢字圏・悲漢字圏との比較.” 教育心理学研究 32 (3): 182–90.