オンライン・シンポジウム「ことば・認知・インタラクション9」


「ことば・認知・インタラクション9」


趣旨

会話は、ことばと認知とインタラクションが出会う場です。私たちのプロジェクトでは、言語学・心理学・会話分析・認知科学・情報工学など、さまざまなアプローチから会話や話し言葉の諸現象に関する研究を行なっています。今回は2013年から数えて9回目の開催となります。今回は、会話分析の分野で長年国際的に活躍されている田中博子先生と、アフリカ農耕民から宇宙人まで多岐にわたる相互行為を考察されている木村大治先生を招待講演にお招きし、みなさんと共に議論する場を設けました。多くの方の参加をお待ちしております。


招待講演1

  • タイトル:物語りにおける「が」の働き:会話分析からの考察
  • 講師:田中博子(元エセックス大学)
  • 発表資料: LCI2021_Tanaka
  • 要旨:日常会話の物語連鎖 (storytelling sequence) において、語りに現れる主格助詞「が」の働きを、会話分析の手法を用いて検証する。会話データを見ると、物語の開始部、背景説明、進展部分、クライマックスやオチなど、様々な段階で「が」が随時産出される。本報告では、[名詞句 +「が」+ 述語]という基本的な構造の中で現れる「が」に焦点を当て、物語の語り手が、名詞句を述語に関連づけるマッピング手段として「が」を運用している点に注目する。このマッピングは、先行会話環境の文脈に大きく依存し、名詞句と述語の間で多種多様な関連性を想起または暗示させるために利用される。例えば、物語の開始部においては、それまでに話されてきた内容を、これから話されるであろう物語に関連付けたり、終わりの部分ではオチやクライマックスの予告やタイミングを効果的に演出することに寄与し物語のドラマティックな展開を導くこともある。このように、「が」は現れている発話自体をはるかに超えて、会話のより広い範囲に及ぶような相互行為上の役割を果たしていると言える。

招待講演2

  • タイトル:数学と身体性
  • 講師:木村大治(京都大学名誉教授)
  • 発表資料: LCI2021_Kimura
  • 要旨:近年、「身体性」の概念はさまざまな分野で注目されているが、私は、いっけん身体性の対極にあるように思われる数学的思考においても、「身体性と呼びたくなるもの」や、数学的対象をめぐる会話のプロセスが中心的な役割を果たしていると考えている。このことについては、2013年に書いた「数学における身体性」という論文、および最近『数学セミナー』に書いたエッセイ「ファースト・コンタクトと数学」で論じているが、本発表ではそれらを敷衍して、「身体性」概念をどう拡張していくのかについて考えてみたい。

講演1

  • タイトル:接客場面における店員間のチームワーク:リクルートメントの観点から
  • 講師:森本郁代(関西学院大学)
  • 発表資料: LCI2021_Morimoto
  • 要旨:本研究では、2人以上の店員が共同で接客する場面に注目し、彼らのチームワークが、そのつどの文脈と物理的な環境に感応しつつ、どのような言語的、非言語的資源を用いて達成されているのかを検討する。分析の観点として、近年注目されている「リクルートメント(recruitment)」という概念を援用し(Kendrick and Drew, 2016)、接客時の店員同士の手助けの組織化の様相と、そこに見られる彼らの指向に焦点を当てる。

講演2

  • タイトル:長唄三味線の稽古中に師匠が用いる「ね」発話の様相
  • 講師:名塩征史(広島大学)
  • 発表資料: LCI2021_Nashio
  • 要旨:本研究は、師匠と習い手が1対1で向かい合い、互いの演奏が観察可能な状況での同時演奏を基調とする長唄三味線の稽古場面について分析・考察するものである。当該の稽古場面で師匠は、習い手に対する評価や指導を演奏と並行して継時的・場当たり的に行い、不格好でも演奏を継続するよう習い手を促し、自分の演奏から手が離せない状況の中で、演奏のポイントを端的な発話と限られた身体動作によって指導しなければならない。本発表では、このような指導の中で師匠が用いる「ね」発話に焦点を当てる。文末に付与される終助詞の「ね」は、話し手と聞き手の間で情報や判断の一致が前提とされることや、話し手の聞き手に対する協応的態度などを表すとされる。本発表で特に注目するのは、そうした終助詞の「ね」が先行する文を伴わずに単独で発話されるケースである。同時演奏を基調とする込み入った指導の中にあって「ね」発話が師匠のどのような態度を反映し、一連のマルチモーダルな指導の組織化にどのように寄与しているのか。本発表では、実際の稽古場面の観察と分析をもとに、先行研究における知見との整合性も検討しつつ、相互行為を介した技術指導の様相について新たな一考を加える。

「ことば・認知・インタラクション8」


本シンポジウムは、2020年3月に開催を予定していた公開シンポジウムをオンラインで開催するものです。

趣旨

会話は、ことばと認知とインタラクションが出会う場です。私たちのプロジェクトでは、言語学・心理学・会話分析・認知科学・情報工学など、さまざまなアプローチから会話や話し言葉の諸現象に関する研究を行なっています。今回は2013年から数えて8回目の開催となります。今回は、社会統語論という新たな切り口から「文法」にアプローチされている吉川正人先生と、アフリカ狩猟採集民のフィールド調査から子どもの社会化まで「相互行為の人類学」という立場で研究されている高田明先生を招待講演にお招きし、みなさんと共に議論する場を設けました。多くの方の参加をお待ちしております。



招待講演1内容

  • タイトル:傀儡の文法論:ヒトの創造性に寄生する社会的ウイルス
  • 講師:吉川正人(慶應義塾大学)
  • 要旨:文法は生得的か否か。この、文法に関する「生まれか育ちか (“nature vs nurture”)」の議論は今なお続く言語学の一大論争であるが、本講演では、この論争に対し一つの決着をもたらすべく、「ヒトの持つ創造的能力に寄生し伝承される社会的構築物としての文法」という文法観を提示する。文法の生得論者が主張するのは具体的な文法規則というよりはそれを操ることを可能にする基本的な能力 (e.g., 併合・再帰) の生得性であるが、これを最大限肯定したとしても、即ち「文法が生得的である」という結論には必ずしも至らない。むしろ、文法とは、コミュニティに共有された慣習という意味で本質的に社会的な構築物であり、それが謂わば要素の組み合わせや類推などを通して創造的に表現を作り出すヒトの能力を「利用」していると考えるべきである。本講演では、このような文法観を支持すべき根拠を複数提示しながら、文法の生得的性質と社会的性質を整理し全体像を素描していく。

招待講演2内容

  • タイトル:日本における言語社会化と「責任」の文化的形成
  • 講師:高田明(京都大学)
  • 要旨:言語社会化論は、子どもは成長の過程で、言語以外を含む様々な記号論的資源を用いることで、状況に応じた適切な行為を行うようになっていくというパースペクティブを提示している。こうしたパースペクティブに立脚して、発表者らは、日本/日本語における言語社会化が生じる過程について、「お腹の赤ちゃん」をめぐる参与枠組み、指さしによる注意の共有、行為指示をめぐるコミュニケーション、ものの移動による環境の更新、感情語彙による道徳性の社会化、物語りによる注意、感情、道徳性の組織化といった研究を推進してきた(高田 近刊)。本発表では、そうした研究の成果の一部を紹介する。こうした研究は、文化的に枠づけられた相互行為の中で子どもが状況に応じて適切に振る舞うための時間的・空間的な幅を広げていく過程を解明し、その発話共同体を特徴付ける生活世界がどのように生産、維持、変革されるかについての私たちの理解を深めることに貢献する。

講演1内容

  • タイトル:Reference in conversation
  • 講師:Tsuyoshi Ono (University of Alberta)
  • 要旨:Our examination of everyday interactions highlights the interactional and thus temporal nature of reference in human interaction. Specifically, we find:
    1. As interaction unfolds, the specificity of what is being talking about (i.e., reference) constantly shifts: from general types to specific objects and from specific objects to general types.
    2. A speaker’s less-than-specific referents, however inexact they may be, are often then ‘reified’ as referents by the recipient.
    Our data thus show that reference is a profoundly interactional phenomenon – temporal, often non-discrete and non-exact, constantly negotiated, and continually emergent.

    ※発表は日本語で行ないます。


講演2内容

  • タイトル:反応表現の相互行為上の機能と韻律的バリエーション:英語reallyを例に
  • 講師:横森大輔(九州大学)
  • 要旨:会話データを用いた言語研究の強みの一つは個々の言語表現の相互行為上の働きを記述できることにあり、そのような記述が特に期待される研究対象として「あいづち」をはじめとする様々な反応表現がある。これまで反応表現の研究は数多く行われているが、語彙や構文ごと(例:「はい」「うん」)に特徴の記述が行われる傾向が強く、韻律上の特徴を考慮した研究は必ずしも多くない。本研究では、英語会話において情報伝達(informing)への反応として用いられる談話標識reallyに着目し、上昇調で産出された場合と下降調で産出された場合に指標されるスタンスの違いとそれによって成し遂げられる相互行為上の働きの違いを、会話分析の手法を用いて明らかにする。分析には米国における友人・家族間の電話会話の音声を集めたCallHomeコーパスを用いる。分析結果として、上昇調の”Really?”と下降調の”Really.”では、いずれも先行発話で伝えられた情報の真性に焦点化するという共通点がある一方、その情報の受け止め方のスタンスに微細な違いがあり、それが相互行為の展開の違いとして現れていることを示す。

「ことば・認知・インタラクション8」


本シンポジウムは中止となりました。

趣旨

会話は、ことばと認知とインタラクションが出会う場です。私たちのプロジェクトでは、言語学・心理学・会話分析・認知科学・情報工学など、さまざまなアプローチから会話や話し言葉の諸現象に関する研究を行なっています。今回は2013年から数えて8回目の開催となります。今回は、社会統語論という新たな切り口から「文法」にアプローチされている吉川正人先生と、アフリカ狩猟採集民のフィールド調査から子どもの社会化まで「相互行為の人類学」という立場で研究されている高田明先生を招待講演にお招きし、みなさんと共に議論する場を設けました。多くの方の参加をお待ちしております。



招待講演1内容

  • タイトル:傀儡の文法論:ヒトの創造性に寄生する社会的ウイルス
  • 講師:吉川正人(慶應義塾大学)
  • 要旨:文法は生得的か否か。この、文法に関する「生まれか育ちか (“nature vs nurture”)」の議論は今なお続く言語学の一大論争であるが、本講演では、この論争に対し一つの決着をもたらすべく、「ヒトの持つ創造的能力に寄生し伝承される社会的構築物としての文法」という文法観を提示する。文法の生得論者が主張するのは具体的な文法規則というよりはそれを操ることを可能にする基本的な能力 (e.g., 併合・再帰) の生得性であるが、これを最大限肯定したとしても、即ち「文法が生得的である」という結論には必ずしも至らない。むしろ、文法とは、コミュニティに共有された慣習という意味で本質的に社会的な構築物であり、それが謂わば要素の組み合わせや類推などを通して創造的に表現を作り出すヒトの能力を「利用」していると考えるべきである。本講演では、このような文法観を支持すべき根拠を複数提示しながら、文法の生得的性質と社会的性質を整理し全体像を素描していく。

招待講演2内容

  • タイトル:日本における言語社会化と「責任」の文化的形成
  • 講師:高田明(京都大学)
  • 要旨:言語社会化論は、子どもは成長の過程で、言語以外を含む様々な記号論的資源を用いることで、状況に応じた適切な行為を行うようになっていくというパースペクティブを提示している。こうしたパースペクティブに立脚して、発表者らは、日本/日本語における言語社会化が生じる過程について、「お腹の赤ちゃん」をめぐる参与枠組み、指さしによる注意の共有、行為指示をめぐるコミュニケーション、ものの移動による環境の更新、感情語彙による道徳性の社会化、物語りによる注意、感情、道徳性の組織化といった研究を推進してきた(高田 近刊)。本発表では、そうした研究の成果の一部を紹介する。こうした研究は、文化的に枠づけられた相互行為の中で子どもが状況に応じて適切に振る舞うための時間的・空間的な幅を広げていく過程を解明し、その発話共同体を特徴付ける生活世界がどのように生産、維持、変革されるかについての私たちの理解を深めることに貢献する。

講演1内容

  • タイトル:Reference in conversation
  • 講師:Tsuyoshi Ono (University of Alberta)
  • 要旨:Our examination of everyday interactions highlights the interactional and thus temporal nature of reference in human interaction. Specifically, we find:
    1. As interaction unfolds, the specificity of what is being talking about (i.e., reference) constantly shifts: from general types to specific objects and from specific objects to general types.
    2. A speaker’s less-than-specific referents, however inexact they may be, are often then ‘reified’ as referents by the recipient.
    Our data thus show that reference is a profoundly interactional phenomenon – temporal, often non-discrete and non-exact, constantly negotiated, and continually emergent.

    ※発表は日本語で行ないます。


講演2内容

  • タイトル:反応表現の相互行為上の機能と韻律的バリエーション:英語reallyを例に
  • 講師:横森大輔(九州大学)
  • 要旨:会話データを用いた言語研究の強みの一つは個々の言語表現の相互行為上の働きを記述できることにあり、そのような記述が特に期待される研究対象として「あいづち」をはじめとする様々な反応表現がある。これまで反応表現の研究は数多く行われているが、語彙や構文ごと(例:「はい」「うん」)に特徴の記述が行われる傾向が強く、韻律上の特徴を考慮した研究は必ずしも多くない。本研究では、英語会話において情報伝達(informing)への反応として用いられる談話標識reallyに着目し、上昇調で産出された場合と下降調で産出された場合に指標されるスタンスの違いとそれによって成し遂げられる相互行為上の働きの違いを、会話分析の手法を用いて明らかにする。分析には米国における友人・家族間の電話会話の音声を集めたCallHomeコーパスを用いる。分析結果として、上昇調の”Really?”と下降調の”Really.”では、いずれも先行発話で伝えられた情報の真性に焦点化するという共通点がある一方、その情報の受け止め方のスタンスに微細な違いがあり、それが相互行為の展開の違いとして現れていることを示す。


EIL2019 & LCI-7 Joint International Symposium:

Embodied Interaction and Linguistics 2019

Language, Cognition, and Interaction 7


Overview

Face-to-face interaction in physical environments is the most basic form of language use and should thus be the primary data source for linguistic and interaction studies. Inviting leading scholars of the field from overseas and Japan, this international symposium aims to uncover how people use their bodies and language in various kinds of real-world situations. Since the symposium is also intended to be the opportunity for all participants to share and exchange ideas, anyone interested is welcome to participate.



Invited Talk 1

  • How syntax emerges in embodied interaction
  • Speaker: Leelo Keevallik (Linköping University)
  • Abstract: Language is but one resource of sense-making and action formation. As interacting human beings we cannot merely rely on our earlier experiences of lexicon and grammar, because this abstracted knowledge does not in itself guarantee mutual understanding here and now. A more realistic view on the achievement of intersubjectivity is to be found in the complex interplay between the embodied language, body movements, and the material environment. In this paper I will use data from contexts where bodies are in focus, pilates and dance classes, to show how syntactic structure emerges step-by-step in teacher talk. It does so reflexively to the students’ moving bodies, while it simultaneously directs the students through the partially known moves. The teacher times syntactic coordination, phrasal constructions and occasionally even morphological suffixes to the ongoing physical exercise. In contrast to formal theories that consider grammar as a device of coherent expression of pre-planned propositions, this study argues that syntactic structure emerges as part of practical action across participants and modalities.

Invited Talk 2

  • Interactive coordination of vocalization and movement in “rock-paper-scissors” game to synchronize action
  • Speaker: Hiromichi Hosoma (University of Shiga Prefecture)
  • Abstract: In collaborative work, we often inform the timing of the action each other to accomplish the synchronization of our behavior. Here we describe the collaborative process of “rock-paper-scissors” game where multiple people synchronize their fist movements.15 pairs (24 women, 6 men) participated to play janken without a referee. Results showed that the timing of the motion often deviated in the first half of the janken: all participants used the call “Saisho wa guu (Rock for the first)”, and the up and down direction of movements or the timing of movements were shifted among participants at the beginning of the call. However, participants synchronized their movements within a few strokes by waiting for the stroke of the opponent at the start or the end of the stroke, or by changing the length of the distance of the stroke. In addition, the phoneme structure of the utterances contributed for providing the timing of the waiting to adjust a time frame of these strokes. In all, results suggest that players of janken accomplish the synchrony of their arm movements using the time structure of their utterance and strokes in the early stages of play.

Presentation 1

  • How to instruct the way of seeing and understanding the phenomenon: A case study using multimodal and narrative analyses
  • Speaker: Kaori Hata (Osaka University)
  • Abstract: The paper aims to illustrate how the combination of multimodal and narrative analyses works effectively by examining an interaction between parents and their son in a scientific experiment. In the experiment, I pay attention to how parents as experts attract their son’s attention to the particular way of seeing and understanding a phenomenon by using their bodily movements and verbal instructions. For the purpose of this study, data taken from an episode in the Corpus of Everyday Japanese Conversation, constructed by NINJAL, is analysed. It is a family discourse in which parents instruct their son to complete his science homework. It is observed that the father’s bodily movements, verbal instructions, mother’s peripheral participation roles, the younger brother’s attitude, and parents’ collaborative instructions converge into directing the son to find the specific ways of seeing the phenomenon in the experiment and guide him towards the ‘correct’ answer provided in the textbook. In conclusion, I ague for a narrative analysis in a situated activity.

Presentation 2

  • Instructive bodily demonstrations situated in Karate lessons
  • Speaker: Seiji Nashio (Hiroshima University)
  • Abstract: The purpose of this presentation is to examine interactive bodily instructions in child-oriented Karate lessons through a multimodal analysis. The analysis specifically focuses on episodes of instructive demonstrations. That is, the primacy instructor of the Karate lesson, Shihan, interrupts a group or pair practice to single out the target trainee that requires instruction to correct his/her bodily motions, and demonstrates bodily interaction with other instructors or trainees before the target trainee. The result shows that 1) these interactive demonstrations basically emphasize the importance of practice with conscious awareness of his/her (imaginary) opponent’s motion to the trainee, even during a form practice with no opponent; 2) the demonstrations are interactively organized by the Shihan’s multimodal action, which requires the spontaneous instructions to the partner to perform; and 3) the insertion of the demonstration is successfully accomplished by not only the main participants of the instructive demonstration, but also other trainees and instructors around them, that are conventionally situated in the Karate lesson.


「ことば・認知・インタラクション6」


趣旨

会話は、ことばと認知とインタラクションが出会う場です。私たちのプロジェクトでは、言語学・心理学・会話分析・認知科学・情報工学など、さまざまなアプローチから会話や話し言葉の諸現象に関する研究を行なっています。今回は2013年から数えて6回目の開催となります。今回は、新たな試みとして、「言語・相互行為研究の新展開:多様な場面の会話データから見えてくること」と題したパネル討論を設けることにしました。多彩なパネリストとともに活発に議論したいと思います。多くの方の参加をお待ちしております。



講演1内容

  • タイトル:援助はどのように行われるか:サービス場面の相互行為分析
  • 講師:森本郁代(関西学院大学)
  • 要旨:近年、「今直面している問題を解決するための援助の求めとそれに対する他者の援助もしくは援助の申し出(recruitment for assistance)」という観点から、「依頼」と「申し出」を、連続的な行為として捉える研究が見られる(Kendrick and Drew, 2014, 2016)。これらの研究の多くは、主に援助の求めが、それぞれの連鎖環境や物理的環境の中で、どのような言語的、非言語的資源を用いて組み立てられ、認識可能となっているのかに焦点を当てている(Kendrick and Drew, 2016; Drew and Kendrick, 2017)。本報告では、サービス場面におけるrecruitment for assistanceの連鎖に焦点を当て、特に、援助の申し出が明示的に行われない場面において、援助がどのように行われるのかを記述するとともに、そうした場面での援助の仕方と援助を行う側のアイデンティティとの関係について議論する。

講演2内容

  • タイトル:会話する動機:職務でのコミュニケーションの分析に向けて
  • 講師:高梨克也(京都大学)
  • 要旨:さまざまな日常生活場面で「自然に生起する会話」を分析する際の重要な注意点の一つは、各参与者が「会話に参与する動機」を持っているはずだということである。この「動機」という観点について、本発表では、多職種ミーティングやコンサルテーションといった、職務としての側面が明確なコミュニケーション場面を対象として、それぞれの職務に関わる利害関心や権利義務などの観点からの分析を行うことを通じて、会話への参与動機という観点から会話を特徴づける方法について模索したい。

講演3内容

  • タイトル:同定・確認作業における「見ること」の相互行為的基盤
  • 講師:黒嶋智美(玉川大学)
  • 要旨:本発表では、外科手術における外科医の血管同定作業や、工作における確認作業など、視覚がその構造上、資源となっている相互行為を分析することで、「見ること」の参与者に対する帰属可能性(西阪, 2016)が、どのようにこれらの相互行為を支える基盤となっているのかを明らかにする。対象物を同定したり確認したりする際、行為者の視覚は、言語や身体、道具、他の知覚などによって示され、行為者に固有なものとして扱われる。そのため、これらの行為の受け手にも視覚による同じ対象物を評価することが適切となって相互行為が展開される。このような行為連鎖の記述によって、概念的に多様である「見ること」が、同定や確認を実践上の目的に合わせて行っている参与者にとって、どのような経験として立ち現われているのかについて議論を試みる。

「ことば・認知・インタラクション5」


趣旨

会話は、ことばと認知とインタラクションが出会う場です。私たちのプロジェクトでは、言語学・心理学・会話分析・認知科学・情報工学など、さまざまなアプローチから会話や話し言葉の諸現象に関する研究を行なっています。今回は2013年から数えて5回目の開催となります。今回は、霊長類やアフリカ牧畜民などを対象としたフィールドワークでコミュニケーションの進化などについて人類学の立場から研究されている岡山大学の北村光二先生を招待講演にお招きし、みなさんと共に議論する場を設けました。多くの方の参加をお待ちしております。



招待講演1内容

  • タイトル:人類史というスケールで考えるコミュニケーション
  • 講師:北村光二(岡山大学)
  • 要旨:コミュニケーションとは何かという問いに対する答えには、「情報の伝達」というタイプのものと、「人との関係を作り出すもの」という2種類がある。コミュニケーションという一つの出来事を取り出すという分析的な立場からは、情報の伝達という捉え方になるのに対して、コミュニケーションにコミュニケーションが接続して現実が変わることに注目する立場からは、関係を作り出すものという考え方になる。そして、相互行為システムは、同じ場所に居合わせる人々がするコミュニケーションが次々に接続したまとまりであるが、この「相互行為システムのコミュニケーション」は、人類史を通じて、個人が社会的関係世界に関与して自らをそこに位置づけるうえで最も基礎的で不可欠なものであり続けてきた。ここでは、これを人類史に位置づけて考察しながら、現代日本に生きる私たちが抱えるコミュニケーション問題についても考えたい。

講演1内容

  • タイトル:相互行為基盤としての会話場
  • 講師:坂井田瑠衣(慶應義塾大学/日本学術振興会)
  • 要旨:会話場とは、ある者が話し手として話し出した時、その発話が(少なくとも1人の)受け手によって聞かれることが期待できる状態を指す。これは、いかにして人々が相互行為の時空間的な基盤を刻々と作り出し、維持しているかを捉えるための試論的な枠組みである。医療やサービスなどの実務的なフィールドでは、会話者の構成が頻繁に組み替わる、会話中に移動が生じるなどして、会話場が動的に組織される様子が見られる。本発表では、複数の実務的フィールドにおける会話場の組織化過程を事例分析し、それぞれの実務の特性を反映したやり方で会話場が形成、維持、解体されていることを示す。

講演2内容

  • タイトル:順番交替と認識的地位
  • 講師:早野薫(日本女子大学)
  • 要旨:サックスら(Sacks, Schegloff and Jefferson 1974)は、現在の話し手が次の話し手を選ぶための技法のひとつとして「会話者が社会的に何者であるのか」を利用する技法を挙げている。例えば、ある人物に関する質問が問われ、その場にその人物の妻/夫がいたならば、この質問は妻/夫に向けられたものとして理解されるだろう。このような事例は、「誰が何を知っているべきか」、どのような「認識的地位(epistemic status)」(Heritage 2012)にあるかに関する会話参加者たちの理解を拠り所として順番移行が成立する事例だと言うこともできる。本発表では、認識的地位が順番割り当ての技法として利用されている事例を取り上げ、「認識的地位」が会話の中でどのように具現し、強化されたり交渉されたりするか、分析、考察を試みる。

講演3内容

  • タイトル:「日常会話コーパス」による談話標識「だから」の研究
  • 講師:臼田泰如(国立国語研究所)
  • 要旨:「だから」という談話標識は、それ以前までの発話ややりとりにおける情報を受け、その時点での結論を導くという構造的役割をもつと考えられている。しかし、実際の会話においては、必ずしもそのような論理的関係を表示するとは限らず、原因と結果の関係にあるとは考えにくい要素同士をつなぐ位置に生じることも少なくない。本発表では、こうした「だから」について、現在構築中の「日本語日常会話コーパス」のデータを用いて、会話の中でどのような役割を担っているのか考察を試みる。またこの考察を通じて、充実したデータ量と付加的情報をもつ会話コーパスが関連分野にどのように貢献可能かについて議論を深めたい。

「ことば・認知・インタラクション4」


趣旨

会話は、ことばと認知とインタラクションが出会う場です。私たちのプロジェクトでは、言語学・音声学・心理学・認知科学・会話分析・情報工学など、さまざまなアプローチから会話や話し言葉の諸現象に関する研究を行なっています。今回は2013年から数えて4回目の開催となります。二人の先生方に招待講演をお願いしています。一人は言語類型論・言語人類学の立場から文法研究を進めておられる東京外国語大学の中山俊秀先生で、もう一人は「しゃべってコンシェル」のQ&A機能の研究開発などで知られるNTTメディアインテリジェンス研究所の東中竜一郎先生です。例年以上に幅広い視点からの議論ができると期待しています。多くの方の参加をお待ちしております。


  • 日時:2016年3月25日(金) 13:00-17:30
  • 場所:東京工科大学蒲田キャンパス12号館5階 多目的実習室
    http://www.teu.ac.jp/campus/access/006648.html
  • プログラム:
    13:00-13:10 開会挨拶
    13:10-13:50 講演1:森大毅(宇都宮大学)
    会話中の行為連鎖に関与する発話の特徴
    14:00-15:00 招待講演1:中山俊秀(東京外国語大学)
    話しことばが新たに拓く文法研究を考える
    15:10-16:10 招待講演2:東中竜一郎(NTTメディアインテリジェンス研究所)
    雑談対話システムにおける対話現象
    16:20-17:00 講演2:遠藤智子(日本学術振興会/筑波大学)
    儀礼の中の相互行為:家庭内神道祖霊祭における言語行動と非言語行動
    17:00-17:30 総合討論
  • 参加費:無料
  • 主催:

招待講演1内容

  • タイトル:話しことばが新たに拓く文法研究を考える
  • 講師:中山俊秀(東京外国語大学)
  • 要旨:この講演では、話しことばを基盤とした文法研究の必要性と可能性について考える。
    従来の文法研究においては、書きことばや使用のコンテクストから切り離された言語表現を基盤にその記述・分析・理論化の研究が行われてきた。しかしながら、「文法体系がどのようにして今ある形になったのか」という視点から文法の作りを明らかにしようとしてみると、これまでの研究でほぼ全く顧みられていなかった話しことばにおける言語使用の実態を考えざるをえない。文法は歴史的変化の中で形づくられる体系であり、その変化は言語使用の中で進むからである。
    話しことばのデータに基づいて文法パターンの研究を試みてすぐに思い知るのは、従来の文法研究の中で築き上げられてきた記述・分析枠組みと話しことばの実態の間のミスマッチの大きさである。それは、単に運用(performance)における誤差という性質のものではなく、システムの本質に関わるものである。
    この講演では、話しことばの実態が示唆する文法体系の特性を確認し、その特性を踏まえた文法観に基づく分析・記述枠組み、さらには文法に関して我々が本来目を向けるべきより根源的な研究課題とは何かを考える。

招待講演2内容

  • タイトル:雑談対話システムにおける対話現象
  • 講師:東中竜一郎(NTTメディアインテリジェンス研究所)
  • 要旨:日常会話が可能なコンピュータを目指し、雑談対話システムの構築を進めている。本講演では、雑談対話システムがどのように雑談を実現しようとしているかについて述べ(たとえば、大規模テキストデータからの発話知識構築やオープンドメイン質問応答技術など)、ユーザとの対話を分析した結果について述べる。分析では、特に対話破綻の現象を取り上げ、対話破綻の類型やどういったシステム発話が対話に悪影響をもたらすのかについて述べる。本講演では、対話ログやユーザとのやり取りの動画を多く用いて雑談対話システムにおける対話現象を紹介し、対話システム研究者と言語学者の橋渡しができるようにしたいと考えている。

講演1内容

  • タイトル:会話中の行為連鎖に関与する発話の特徴
  • 講師:森大毅(宇都宮大学)
  • 要旨:会話における行為連鎖は、談話を構造としてとらえ、分析・モデル化することを可能にするために重要である。工学的には、これは人間と機械のインタラクションにおいて、いつ話し始めるかといった機械の行動モデルを得るための資料となり得る。本発表では、会話コーパスに条件的関連性を有する連鎖を記述する試みについて述べるとともに、機械学習によって見出された、連鎖の引き金になる発話(いわゆる隣接ペア第1部分)の言語的・音響的特徴について述べる。

講演2内容

  • タイトル:儀礼の中の相互行為:家庭内神道祖霊祭における言語行動と非言語行動
  • 講師:遠藤智子(日本学術振興会/筑波大学)
  • 要旨:言葉は多様である。それは、様々な言語が文法や音韻において異なる特徴を持つということだけでなく、一人の人間による言語行動であっても、種々の要因によって様々に異なる形をとりうるということでもある。このような個人の言語使用における多様性は、voice (Hill 1995)やキャラクタ(定延2013)、文法の多重性仮説(Iwasaki 2015)等の観点から論じられているが、その実態の解明にはさらなる実証的な研究が必要である。本発表では、ある家庭で毎年行われている神道の祖霊祭をビデオ撮影したデータを用い、祭司および他の参加者が、儀礼とその前後という状況の違いや、参加者の性質(大人か子どもか)等によって様々に異なる類の言語および非言語行動を行っていることを論じる。

「ことば・認知・インタラクション3」


趣旨

会話は、ことばと認知とインタラクションが出会う場です。私たちのプロジェクトでは、言語学・音声学・心理学・会話分析・情報工学など、さまざまなアプローチから会話や話し言葉の諸現象に関する研究を行なっています。一昨年度・昨年度に引き続き、今年度も公開シンポジウムを開催します。今回は、会話分析・相互行為論の立場からの文法研究を精力的に進めているイリノイ大学の林誠先生を招待講演にお招きし、みなさんと共に議論する場を設けました。多くの方の参加をお待ちしております。



招待講演内容

  • タイトル:Collateral effects(付随効果)と相互行為言語学の展望
  • 講師:林誠(イリノイ大)
  • 要旨:社会学の分野で発展してきた会話分析の方法論は、言語研究、特に実際の場面での言語使用を対象とした文法研究に寄与するところが大きい。本講演では、Sidnell & Enfield (2012)によって提唱されたcollateral effects(付随効果)という概念を紹介しつつ、会話分析からみた文法研究の近年の動向、今後の展開について議論する。「言語相対論研究の第3の領域」として提案されたcollateral effectsという概念は、示唆に富むものではあるものの同時に批判の余地もある概念である。この発表を機に、参加者の方々と大いに議論できることを期待する。

講演1内容

  • タイトル:応答の前置きとして現れる「どう+コピュラ」型質問の相互行為的特徴
  • 講師:増田将伸(甲子園大)
  • 要旨:本発表では、「どう+コピュラ」型質問が応答の前置きとして現れる例を会話分析の手法により分析する。この前置きは、応答の前置きとして現れる他のターン冒頭要素のように質問への抵抗を行うという側面と、応答者が応答の途上にあり、質問の要請に応えようとしているという協調的スタンスを示すという側面を併せ持つ点が特徴的である。この前置きを含む発話の構成と連鎖中の位置を検討しながら、この前置きの相互行為的特徴を議論したい。

講演2内容

  • タイトル:外国人介護従事者の介護の談話の特徴と問題の分析
  • 講師:大場美和子(昭和女子大)
  • 要旨:本発表では、外国人介護従事者の介護技術講習会ならびに介護施設でのアルバイト場面における録音データを対象に、介護を行う際の談話のパターンとそこで発生する日本語の問題を分析する。分析結果は、介護の現場での就労につなげるため、日本語教育の観点から考察を行う。

講演3内容

  • タイトル:均衡性を考慮した大規模日常会話コーパスの構築に向けて
  • 講師:小磯花絵(国語研)
  • 要旨:現在、大規模な日本語日常会話コーパスの構築を目指し、その準備研究として、(1)均衡性を考慮した会話コーパスの設計、(2)種々の日常会話を収録するための方法論、(3)日常会話を適切・効率的に転記するための方法論の策定を進めている。とくに(1)については、多様な日常会話をできるだけ網羅して記録することを目指し、現代日本人がどのような種類の会話をどの程度行っているのかを調査し、それに立脚してコーパスを設計することとした。本発表では、現在進行中の調査の概要と中間結果について報告すると同時に、調査に基づき日常会話コーパスをどのように設計するか、その方針について議論する。

「ことば・認知・インタラクション2」


趣旨

会話は、ことばと認知とインタラクションが出会う場です。私たちのプロジェクトでは、言語学・音声学・心理学・会話分析・情報工学など、さまざまなアプローチから会話や話し言葉の諸現象に関する研究を行なっています。この度、昨年度に引き続き公開シンポジウムを開催し、その成果の一端を紹介するとともに、コミュニケーションの観点からユニークな言語・文法研究を数多く発表している神戸大学の定延利之先生を招待講演にお招きし、みなさんと共に議論する場を設けました。多くの方の参加をお待ちしております。



招待講演内容

  • タイトル:発話の文法
  • 講師:定延利之(神戸大)
  • 要旨:これまでの文法研究では、文が不自然である理由として、要素間の組み合わせ不全(例:「は私です学生」「私は見知らぬ男に金をくれた」)や、状況との組み合わせ不全(例:別れ際に「今日は」)しか想定されていなかった。また、日本語の自然発話はしばしば文節単位でなされるが、これまでの多くの文法研究は、文節(非述語文節)には注目していなかった。本講演では、日本語の文と文節がいわゆる発話行為論的な要因によって自然さを変え得ることを示し、文法研究が発話の観点をも備えるべきであることを論じる。具体的な内容は以下2点である。

    第1点。日本語の文は「きもちが或る程度現れていなければ不自然(きもち欠乏症)になる」という理屈によって,自然になったり不自然になったりする。

    • 例1:「明日は雨かな」と言われて「だ」と答えることに比べて「だなぁ」と答える方がより自然。
    • 例2:現場を目の当たりにして「だろう(下降調)。わかってたよ」と言うよりも「だろう(上昇調)。わかってたよ」と言う方がより自然。

    第2点。日本語の文節(非述語文節)も、「きもちが或る程度現れていなければ不自然(きもち欠乏症)になる」という、文と同じ理屈によって、自然になったり不自然になったりする。

    • 例1:非述語文節として、「それをです、」よりも「それをですね、」の方がより自然。
    • 例2:非述語文節として、「たしか田中さんとだったわ(下降調)、」よりも「たしか田中さんとだったわ(上昇調)、」の方がより自然。

講演1内容

  • タイトル:会話における発話末の機能表現:定型・韻律・モダリティの観点から
  • 講師:土屋智行(国語研)
  • 要旨:発話末の機能表現は、発話内容に対する話者の心的態度を主に示すが、その表現の多くは、文節間の係り受け関係を超えた結合、いわば定型的な特徴を有する。本発表では、発話末の機能表現の定型性の度合い、韻律的な特徴、機能的な特徴を分析することで、文節とその係り受け関係というレベルとは異なる発話構造の一端を明らかにする。

講演2内容

  • タイトル:食卓会話のための食事動作調整―発話に伴うジェスチャーと食事撤回のタイミング―
  • 講師:天谷晴香(東大)
  • 要旨:食事中に会話を行うには、食事行動と談話行動の調整が必要である。発話に伴うジェスチャーを行う際、食事動作は中断・撤回される。ジェスチャーの直前に行われる食事動作の撤回は発話のどのタイミングで行われ始めるか、また、ジェスチャーが伴う発話の短い単位はターンのどの位置に現れているか、詳細な分析により検討する。談話行動が非談話行動に影響する場面をそれぞれの行動ユニットの境界を明確にしながら記述する。

講演3内容

  • タイトル:「やっぱ(り)」にみる話し手の態度表示と相互行為プラクティス
  • 講師:横森大輔(学振/名古屋大)
  • 要旨:言語表現の中には、話し手の態度を表示する一群が存在する。日本語の副詞「やっぱ(り)」もそのような言語表現の一つであり、これまでの日本語研究によって「やっぱ(り)」がどのような話し手の態度を表示するのか定式化が与えられてきた。ところで、言語表現を通じた話し手の態度表示とは、話し手が自分の心内をいたずらに露出しているというよりも、参与している相互行為の中の特定のタイミングで敢えて呈示する営みとして理解できる。本発表では、自然会話データ(約10時間分)から「やっぱ(り)」の使用例を収集して分析し、相互行為の流れの中のどのような局面で「やっぱ(り)」が用いられ、その後の展開にどのような影響を及ぼしているか、いくつかの顕著なプラクティスを報告する。そして、この事例研究の検討を通じ、ことば・認知・インタラクションという3領域がいかに相互に交わっているか議論を試みたい。

「ことば・認知・インタラクション」


趣旨

会話は、ことばと認知とインタラクションが出会う場です。私たちのプロジェクトでは、言語学・音声学・会話分析・日本語教育・心理学・情報工学など、さまざまなアプローチから会話や話し言葉の諸現象に関する研究を行なっています。この度、その成果の一端を紹介するとともに、会話における文法の研究で著名なUCLAの岩崎勝一先生を招待講演にお招きし、みなさんと共に議論する場を設けました。多くの方の参加をお待ちしております。



招待講演内容

  • タイトル:「みかんよ みかん」構文:定型構文分析により会話メカニズムを考察する
  • 講師:岩崎勝一(UCLA)
  • 要旨:情報交換、社会・相互行為的配慮、主観性表出は会話当事者が会話を進めていく上で常に視野に入れておかなければならない重要な課題である。情報交換は主に言語学、関連性理論など、社会・相互行為的配慮は社会言語学、会話分析など、主観性表出は広い意味での語用論などとそれぞれ違った分野での研究が進められている。ここではこのような理論的枠組みから出発するのでなく実際に会話当事者がどのようにして会話という認知論的、相互行為的に複雑な活動を行っているかを観察し会話のメカニズムを総合的に解明する提案を行う。実際には「みかんよ、みかん」という定型構文を分析し、会話当事者に与えられている課題を詳細に検討する。

講演1内容

  • タイトル:会話における時間:認知と相互行為の調整
  • 講師:伝康晴(千葉大学)
  • 要旨:会話において発話は実時間的に産出され、理解される。そこでは、相互行為に適切なタイミングと認知処理に必要な時間とがさまざまな仕方で調整されている。本発表では、話者交替のタイミングの予測、発話開始部での時間稼ぎ、食事と会話の最適配分といった話題を題材に、会話における時間に関する認知的・相互行為的過程の一端を明らかにする。

講演2内容

  • タイトル:「遡及的連鎖(レトロ・シークエンス)」の可能性
  • 講師:鈴木佳奈(広島国際大)
  • 要旨:TBA

講演3内容

  • タイトル:話者交替規則の周辺:統語・韻律・視線
  • 講師:榎本美香(東京工科大)
  • 要旨:Sacksら(1974)の提案している話者交替規則は(a)発話末周辺で、(b)話し手に選ばれた者、真っ先に話し出した者が次話者になることを規定している。本発表では、(a)日本語における助動詞や終助詞の統語的要素、あるいは最終アクセント句周辺の韻律的要素が聞き手に発話末を知らせ、(b)話し手が視線を向けていた聞き手が優先的に次話者になることを示す。

関連イベント

  • 2/17 (日)には、「相互信頼感」科研が主催する公開シンポジウム「会話を通じた相互信頼感形成」が同じ会場で開催されます。
  • 2/19 (火)には、国立国語研究所のNINJALコロキウムで岩崎勝一先生が講演を行ないます。詳しくはこちらをご覧ください。