「会話を通じた相互信頼感形成」
趣旨
会話には,情報交換や合意形成だけでなく,会話に参加する人々が相互に信頼という心的態度を醸成する,そしてそれによって情報交換や合意形成を円滑に進めるという機能があります.現実の会話コミュニケーション場面では,人間同士あるいは人間・機械間を問わず,これら両者の機能が調和して進行することがコミュニケーション成功の鍵となります.医療現場でのコミュニケーションを題材として優れた研究実績を残されている原田悦子先生(筑波大学)をお招きするとともに,私達のプロジェクトの研究の一端を紹介し,会話と信頼感に関する議論を深めることを企図してシンポジウムを企画しました.
- 日時:2013年2月17日(日) 13:00-17:00
- 場所:国立情報学研究所12階 1208&1210会議室
http://www.nii.ac.jp/about/access/
※週末は正門が閉まっているため,「時間外出入口」(共立女子大学に面した小さな出入口)から入館していただき,守衛室にて「公開シンポジウムに来た」と伝え,身分証明書をご提示ください. - プログラム:
13:00-13:10 開会挨拶 13:10-13:50 講演1:片桐恭弘(公立はこだて未来大)
相互信頼感と共関心構築14:00-15:00 招待講演:原田悦子(筑波大学)
医療の場での対話と信頼:「その信頼感は信頼できますか?」15:10-15:50 講演2:高梨克也(科学技術振興機構さきがけ/京都大学学術情報メディアセンター)
展示制作のための多職種ミーティングにおける「関心」と「配慮」の分析16:00-17:00 総合討論 - 参加費:無料
- 催:科研費基盤研究(B)「会話を通じた相互信頼感形成のマルチモーダル分析と共関心モデルの研究」
- 主共催:
招待講演内容
- タイトル:医療の場での対話と信頼:「その信頼感は信頼できますか?」
- 講師:原田悦子(筑波大学)
- 要旨:人工物研究,あるいは医療安全という文脈の中で対話を対象として研究をしていると,確かに,対話が単なる情報交換や情報伝達ではなく,何らかの共有であり,その対象はある意味の「信頼感」であることは(実感として)体験できる.そのため,対話が問題解決のツールとなっている状況で次に問題となるのは「その対話は,本当に信頼できる信頼感をもたらしているのか?」という点である.過去のいくつかの対話データを振り返りながら,現在,外から求められている対話研究について,議論していきたい.
講演1内容
- タイトル:相互信頼感と共関心構築
- 講師:片桐恭弘(公立はこだて未来大)
- 要旨:日常場面での会話コミュニケーションは,情報交換,合意形成だけでなく,会話参加者間の関係の構築・維持にも寄与する.本発表では,相互信頼感形成過程の記述のために「共関心構築(concern alignment)」の概念を提案する.メタボ健診に伴う特定保健指導対話を対象として,保健師と受講者との間の相互信頼感の形成・維持の会話過程分析に基づいて,相互信頼感形成の共関心モデルの提案を試みる.
講演2内容
- タイトル:展示制作のための多職種ミーティングにおける「関心」と「配慮」の分析
- 講師:高梨克也(科学技術振興機構さきがけ/京都大学学術情報メディアセンター)
- 要旨:本発表では,科学館での展示制作のための多職種ミーティングにおいて,「気になる/するのは」という表現がどのような会話連鎖上の位置で用いられ,他の参与者からどのような応答を引き出しているかを分析することにを通じて,各メンバーによる関心事や懸念事項の表明とこれに対する他の参与者による配慮とを核として形成される「共関心」をモデル化するための基礎となる経験的知見を提供する.
関連イベント
- 2/16 (土)には,公開シンポジウム「ことば・認知・インタラクション」が同じ会場で開催されます.