第5回LC研究会のご案内

第5回LC研究会を以下の予定で開催します

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第5回LC研究会
日時: 2009年9月16日 (水) 16:00〜18:00
場所: 国立国語研究所417室
発表者: 有本泰子 (東京工科大学大学院メディアサイエンス専攻)
題目: 自然に表出した感情の音響的特徴量による程度の推定
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概要


自然に表出した感情の音響的特徴量による程度の推定

要旨:
感情音声研究はEkmanらに代表される基本感情説に基づいて行われてきたが,Russelなどが支持する次元説を用いた研究も多くなってきてる.本研究では,DalyやPluchikらが次元の一つとして取り入れた感情の程度の軸に焦点を当て,第三者が表現した感情の程度を人間が認知する際に,判断の規準として利用する音響的特徴を明らかにする.さらに,対話中の音声に含まれる感情の程度を自動推定することを目的に,音響的特徴量から感情の程度を連続的に推定するモデルを提案し,その推定精度を検証する.オンラインゲームをプレイ中のプレーヤー同士の対話を収録した音声資料に対し,14 種類の音響的特徴量を抽出した.また,音声資料に対し主観評価実験を行い,Plutchik の一次感情を参考に対話中に表出する感情を8つに分類し,さらに各発話に感情の程度を付与した.主観評価実験により得られた感情の程度と抽出した14 種類の音響的特徴量を用いた重回帰分析により,各感情の程度を推定する線形回帰モデルを作成した.推定モデルの推定精度の検証として,全発話による
クローズドテストと交差検証法(k = 10)と不特定話者に対する検証のためのオープンテストを行った.その結果,交差検証法による検証と不特定話者に対する検証において±0.5の誤差範囲を許容したときの正解率は,悲しみを除いたすべての感情において61.3〜83.2%となり,本モデルにより精度の高い感情の程度推定が可能であることを示した.さらに,各感情の程度推定に貢献する音響的特徴量のうち,発話内の声の強さとスペクトル包絡の傾きはすべての感情の程度推定において共通して貢献することから,感情の種類に関わらず人間が感情の程度を認知するための手掛かりとしている音響的特徴量であることを示した.