日本語用論学会で発表します

日本語用論学会 2011年度 年次大会

日時:2011年12月3日(土)~4日(日)

場所:京都外国語大学

4日の午後に“Utterances in real time: Where interaction and cognition meet” というタイトルで発表をします。

詳しくは学会ホームページをご覧下さい。

第29回LC研の案内です。

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第29回LC研究会
日時: 2011年11月18日(金) 17:00〜19:00
場所: 国立情報学研究所20階2001A室
発表者: 市川熹(早稲田大学人間科学学術院)
題目: 非母語話者の音声対話における話者交替の分析
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概要

円滑な対話の一つの指標と思われる重複発話の分析により、非母語話者(中国語話者)による日本語音声対話の分析の試みを報告する。なお議論では、母語とは何か、バイリンガルやバイモーダルとは何か、それらの(例えば自然科学的視点からの)定義は何か、言語獲得と言語学習の違いは何か、などについて、参加者の考え方をお聞きしたい。

第28回LC研の案内です。

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第28回LC研究会
日時: 2011年10月21日(金) 17:00〜19:00
場所: 国立国語研究所4階モニター室
発表者: 全美ジュ(一橋大学大学院言語社会研究科)
題目: 東京方言のアクセント句融合現象
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概要

東京方言では単語が単独で発話される場合、頭高型を除くすべてのアクセント型で、第1モーラから第2モーラに掛けてF0の上昇が生じる。しかし、日常の会話では、「庭にモモを植える(LHH/LHH/LHH)」という文の文節一つ一つを切り離して発音するよりも、{にわに(LHH)}{ももをうえる(LHHHHH)}のように「モモを」と「うえる」を続けて一句に発音することが多い。このように連続する二つの文節が一つのアクセント句内にまとまると、第1要素(文節)はアクセントどおり発音されるが、第2要素は、1モーラから2モーラにかける句頭上昇(LH)が生じないため、アクセント型が変化する。二つの文節が一つのアクセント句を形成する現象(以下、アクセント句の融合現象)ついて、従来の研究では2要素中、一方が平板式である場合にアクセント句が融合する傾向があると報告されている。本発表では2要素間の文法構造及びフォーカスという二つの要因を加えて、アクセント句が融合する環境について考察する。

第27回LC研の案内です。

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第27回LC研究会
日時: 2011年9月9日(金) 17:00〜19:00
場所: 国立情報学研究所12階1210室
発表者: 田島弥生(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科)
題目: 談話構造と認知傾向との関係を実験的に解明する研究
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概要

日本語、韓国語、中国語の各母語話者を対象に、注視点追跡装置を用いて周辺情報に対する認知傾向を観測した結果、日本語母語話者に最初の5秒間に周辺情報に注目する傾向が見られた。これにより、言語的特徴が認知傾向に及ぼす影響について考察する。

第26回LC研の案内です。

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第26回LC研究会
日時: 2011年7月27日(水) 17:00〜19:00
場所: 国立情報学研究所
(部屋は追って連絡)
発表者: 岡本雅史(成蹊大学理工学部)
題目: 談話・テクスト理解における視覚イメージの介在と構築
   —知覚的理解と概念的理解の相互関係をめぐって—
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概要

 従来、言語コミュニケーションにおける「理解」の問題は、文や発話の「意味」の理解をもって伝達の完了や達成と見做されることが多かった。しかし近年の認知言語学研究では、主観性や話者の視点といった観点から言語コミュニケーションが「語りの場」と「語られる場」の二つに跨って生じていることに焦点が当てられつつある。従って、この二つの場を繋ぐ媒体(メディア)として言語を捉えるならば、言語コミュニケーションの理解は単に概念的意味理解のみに基づいているのではなく、参与者の認知と相互行為の両者が重層的に関わる複雑な事態であると考えられる。こうした背景から、本発表では言語コミュニケーションにおける理解プロセスの一環として、談話・テクスト理解における視覚イメージの介在と構築に着目する。事例としては文学テクストやネットジョーク、漫才対話などを取り上げ、言語コミュニケーションにおける知覚的理解と概念的理解の相互関係(の一端)を明らかにしたい。

第25回LC研の案内です。

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第25回LC研究会
日時: 2011年6月20日 (月) 17:00〜19:00
場所: 国立情報学研究所
(部屋は追って連絡)
発表者: 末崎裕康(総合研究大学院大学複合科学研究科)
題目: 対人場面での身振りに見られるマイクロスリップ
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※曜日・場所ともに通常と違いますので、ご注意ください。

概要

私たちヒトはその行為に無限の可能性を持っています。環境からの様々な制約を受け、その制約の中で可能な行為を探りながら日常生活を営み、その探索過程において、組織化された行為はときに停滞や錯誤を起こすことでよどみ、そしてよどんだ状態から再度組織化されます。特に、錯誤に至る前に修正される微細なよどみはマイクロスリップと呼ばれています。マイクロスリップは、ヒトのある行為が活性化し、遂行され始めた後に調整され、その調整過程で見られるものとされていますが、対話場面での身振りではどのような傾向で見られるのでしょうか。
本発表では、
1)物語説明課題の話者に見られたマイクロスリップの生起機序に関する定量的・質的検討
2)心理カウンセリング場面での来談者の身振り配置の移り変わりとマイクロスリップの生起傾向
について現時点での成果を報告し、それを踏まえて議論できればと思います。

第24回LC研の案内です。

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第24回LC研究会
日時: 2011年5月11日 (水) 17:00〜19:00
場所: 国立国語研究所4階モニター室
発表者: 土屋智行(京都大学大学院人間・環境学研究科)
題目: 定型とその逸脱パターンの分析と考察
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概要

日常的な言語使用において,定型的な表現は必ずしもその形式のみにとどまらず,パロディなどの一定の逸脱がおこなわれる.本発表では,定型表現からの逸脱表現をコーパスから収集し,その形式的な傾向を捉えることで,a) 逸脱が行われる範囲,および b) 保持される形式的パターンを分析する.さらに,この分析から定型表現の「意味的な分析性」の問題と,定型表現をあえて逸脱させることによる機能の検討と考察をおこなっていく.

第23回LC研の案内です。

都合により、今回は国立情報学研究所で開催します。

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第23回LC研究会
日時: 2011年4月1日 (金) 17:00〜19:00
場所: 国立情報学研究所20階2005室
http://www.nii.ac.jp/access/
発表者: 榎本美香(東京工科大学メディア学部)
題目: ターン配列とターン構成に関わる視線というリソース
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概要

話者交替を行うには、聞き手のうち誰が次のターンを取るかというターン配列
の問題と、いつ次のターンを開始するかというターン構成の問題が、それぞれ
の発話で解決されねばならない。本発表では、(1)話し手と聞き手たちの視線
の向きの相乗効果により次話者が決まること、(2)話し手が自発話のどこで聞
き手に視線を向かるかがその発話の完結点を示す手がかりになることを、3人
会話データを用いて示す。

第22回LC研の案内です。

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第22回LC研究会
日時: 2011年2月22日 (火) 17:00〜19:00
場所: 国立国語研究所モニター室
発表者: 林直樹(日本大学大学院文学研究科)
題目: 東京東北部アクセントのあいまい性−音響的指標を用いた検討−
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概要

東京東北部のアクセントは、埼玉特殊アクセントに類似する特殊性・あいまい性を保持することが1940年代から指摘されてきた。当該地域アクセントのあいまい性は、出現音調に「ゆれ」がみられ、聞き取りに困難さが生じることが指摘されてきたが、その音声的特徴はあまり研究が行われてこなかった。本発表の目標は、当該地域アクセントの音声的な側面に注目し、その実態を明らかにすることにある。とくに「アクセントの高低(ピッチ)の幅が東京アクセントなどに比べて狭く感じられる」などと、あいまい性の要因として中心的に言及されてきたアクセントの高低差に加えて、下降タイミングに注目する。上記の特徴を音響的な指標を用いて検討することによって、従来聴覚印象として記述されてきたアクセントのあいまい性を定量的に把握することを試みる。

第21回LC研の案内です。

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第21回LC研究会
日時: 2011年1月13日 (金) 17:00〜19:00
場所: 国立国語研究所モニター室
発表者: 東山英治(千葉大学大学院人文社会科学研究科)
題目: 語りの登場人物を示すジェスチャーの生起要因
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概要

 あるまとまった内容を発話する際、類似した内容に類似したジェスチャーが繰り返し生起することがある。近年、この繰り返される一連のジェスチャーをキャッチメントとして、談話分析の手がかりとする研究がみられる。しかし、これらの研究ではキャッチメントの生起要因についての考察が十分ではない。本研究では、談話のひとつの形態である「語り」の登場人物を示すジェスチャーに限定し、談話における性質からジェスチャーの生起要因を解明することを目的とする。具体的には、対象の登場人物が語りの「中心」であったか、今後も「中心」となりそうかなどを説明変数とし、ジェスチャーの生起の有無を分類する混合効果ロジスティック回帰モデルを構築した。最適モデルから、当該の発話で語りの中心となり、次の発話でも中心となると予測される登場人物にたいしてジェスチャーが生起しやすいことがわかった。また、直近の発話で語りの中心となっている登場人物を言及する際に、その登場人物をゼロ代名詞で指示するとき、ジェスチャーがより生起することも明らかとなった。以上から、本研究は語りの上での特徴量にジェスチャーの生起要因の一端を示した。

第20回LC研の案内です。

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第20回LC研究会
日時: 2010年12月22日 (水) 17:00〜19:00
場所: 国立国語研究所モニター室
発表者: 寺岡丈博(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科)
題目: 動詞連想概念辞書の構築とその応用〜連想に基づいた意味理解の研究〜
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概要

コンピュータの言語理解機能を向上させて人間に近付けるためには,人間が持つ複雑で膨大な言語関連情報を体系化して使用できるようにする必要がある.現在,自然言語処理の分野で主流になっている統計的処理の手法では精度に限度があり,言語表現の多様性を踏まえるとこれ以上の精度向上は困難である.そこで,人間の常識などの知識を人間自身の連想によって集めて体系化し,利用することが精度の向上に必要であると考えられている.今日までに様々な言語資源が開発・構築されてきたが,人間の言葉に対する連想から成り立つものは少なく,特に動詞に対しては連想から成り立つ資源がほとんど無い.日常の
文脈や会話において動作や状態変化を表す動詞は意味理解で中心的な役割を果たしていることを踏まえ,本研究では動詞の深層格情報を抽出する連想実験を行い,大量の連想データから動詞連想概念辞書を構築することで動詞における知識の体系化を図った.ここでは刺激語と連想語の単語間距離を定量化することにより,意味的な距離を計算可能にしている.本研究では,既存辞書との比較や省略語推定システムへの応用を通して動詞連想概念辞書の性質と有用性を評価するとともに,比喩理解や照応解析などの応用手法を提案する.

第19回LC研の案内です。

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第19回LC研究会
日時: 2010年11月26日 (金) 17:00〜19:00
場所: 国立国語研究所モニター室
発表者: 吉川正人(慶應義塾大学大学院文学研究科)
題目: 文事例の超語彙索引付けに基づく構造記述の理論と実践:
パターン束モデルの基礎原理と応用
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概要

統語構造の記述は従来、語とそれを組み合わせる規則・原理の対か、構文文法(Construction Grammar)のように、宣言的な文の「型」の(多重)実現という形で表現されてきた。しかし何れのアプローチも、「語か構文か」という二項対立を暗黙の前提としており、結果的に記述の不備、具体的に言えば、過剰な一般化を招いていると考えられる。本発表では、ヒトの言語記憶の構造と組織化のモデルとして考案されたパターン束モデル(Pattern Lattice Model, PLM)を紹介し、PLMの定義する、語でも(抽象的な)構文でもない中間段階の「(超語彙)パターン((super-lexical)patterns)」を文事例の索引として利用することで、全く新しい形の文構造の記述が可能になり、特にそれがコーパスデータに基づく帰納的な構造記述のア
プローチを取る場合に有効となることを主張する。

第18回LC研の案内です。

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第18回LC研究会
日時: 2010年10月27日 (水) 15:00〜19:00
場所: 国立国語研究所モニター室
発表者&題目:
1. 佐治伸郎(慶應義塾大学政策・メディア研究科)
言語獲得における複数動詞を用いたイベント認知に関する研究とその応用
2. 前川喜久雄(国立国語研究所)
コーパスを用いた自発音声の研究
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佐治くんは公聴会後、前川さんは公聴会前で、いずれも学位論文の内容についてです。よろしくご参集ください。

タイトル

:言語獲得における複数動詞を用いたイベント認知に関する研究とその応用コーパスを用いた自発音声の研究

発表者

:佐治伸郎

概要


本研究の目的は,母語獲得,L2習得において子ども或いはL2学習者が,どのような過程を経て似たような意味を持つ語同士の意味関係を理解し,これらを運用できるようになるのかを明らかにすることである.具体的には,「モノを運ぶ」事態を多様な仕方で呼び分ける中国語動詞を題材として,成人母語話者や子ども,L2学習者がこれらの動詞をどのように使い分けるのかを実験により調査した.分析では,成人母語話者と,子どもや学習者の運用パターンの相違を比較することにより,それぞれ学習過程の特徴や,その学習の困難に働く要因等を明らかにした.本研究の結果は,語意獲得を考える際,一つの語意の獲得過程のみを考えるのではなく,ある語の意味がそれと似たような意味を持つ複数の語との使い分け全体の中で,どの様に学習されていくのかを調査することの重要性を示している.

タイトル

:コーパスを用いた自発音声の研究

発表者

:前川喜久雄

概要

:自発音声は音声研究の本来的な研究対象であるにもかかわらず、従来の音声学は自発音声の研究を避けて通ってきた。本研究の目標は『日本語話し言葉コーパス』(CSJ)を用いることで、日本語自発音声の研究が可能となることを示すことにある。CSJの設計と実装について説明した後、分節的特徴と韻律的特徴の両面にわたる研究成果を報告する。朗読音声を対象とした従来の音声研究において定説とされてきた分析が自発音声の分析によって覆される事例や、朗読音声の研究では未解決であった問題が自発音声の分析によって解決される事例等を多数提示することによって、CSJのような、豊富なアノテーションの施された自発音声コーパスがあれば、自発音声の音声学的研究が可能となり、音声学の新しい可能性が拓けることを示す。

次回のLC研究会を以下の予定で開催します。

今回は9月末にある国際WSの発表練習として、4人が発表します。

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第17回LC研究会
日時: 2010年9月22日 (水) 13:00〜19:00(最大)
場所: 国立国語研究所モニター室
発表者&題目:
1. 前川喜久雄(国立国語研究所)
Final lowering and boundary pitch movements in spontaneous Japanese
2. 丸山岳彦(国立国語研究所)
An annotation scheme for syntactic unit in Japanese dialog
3. 小磯花絵(国立国語研究所)
Towards a precise model of turn-taking for conversation:
A quantitative analysis of overlapped utterances
4. 石本祐一(国立情報学研究所)
Analysis of prosodic features for end-of-utterance prediction in spontaneous Japanese
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いずれも DiSS-LPSS 2010 での発表です。よろしくご参集ください。

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Final lowering and boundary pitch movements in spontaneous Japanese

Kikuo Maekawa (National Institute for Japanese Language and Linguistics)

Standard theory of the prosodic structure in Tokyo Japanese treats both the final lowering and boundary pitch movements as the properties of utterance node. Validity of this treatment was examined by means of corpus-based analyses of spontaneous speech. The results showed that
while final lowering could be treated as a property of utterance, boundary pitch movement could not. The latter should rather be treated as the property of accentual phrase. Based on these results, revised prosodic structure and annotation scheme were proposed.

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An annotation scheme for syntactic unit in Japanese dialog

Takehiko Maruyama (National Institute for Japanese Language and Linguistics)
Katsuya Takanashi (Kyoto University)
Nao Yoshida (National Institute for Japanese Language and Linguistics)

In this paper, we propose a scheme for annotating syntactic units called DCU (Dialog Clause-Unit) in Japanese dialogs. Since there is no explicit devices to mark sentence boundaries in spontaneous speech, precise definition and criteria must be designed to extract syntactic units from the utterance. We show a design of DCU which consists of
clausal and non-clausal units, and the result of current study, an annotation of DCU to eight dialogs of 40 minutes from two different dialog corpora. We examine characteristics of each dialog from the viewpoint of DCU, and compare them to the distribution of clausal-units annotated to monologs.

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Towards a precise model of turn-taking for conversation: A quantitative analysis of overlapped utterances

Hanae Koiso (National Institute for Japanese Language and Linguistics)
Yasuharu Den (Chiba University)

In this paper, we present the outline of a new model of turn-taking that is applicable not only to smooth transitions but also to transitions involving overlapping speech. We identify acoustic, prosodic, and syntactic cues in overlapped utterances that elicit early initiation of a next turn, based on a quantitative analysis of Japanese three-party conversations, proposing a model for predicting a turn’s completion in an incremental fashion using sources from units at multiple levels.

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Analysis of prosodic features for end-of-utterance prediction in spontaneous Japanese

Yuichi Ishimoto (National Institute of Informatics)
Mika Enomoto (Tokyo University of Technology)

In this study, we analyzed prosodic features of accentual phrases and investigated their temporal changes to obtain cues for detecting boundaries at where turn-taking could occur in spontaneous conversations. The acoustic parameters used as prosodic features were the fundamental frequency, sound pressure level, and duration of accentual phrases in long utterance units. The results showed that the fundamental frequency shift between the first and second accentual phrases could be useful for detecting the number of accentual phrases
in the long utterance unit. In addition, the results suggested that a rapid decrease in sound pressure and an extended duration of the accentual phrase constitute a cue for detecting the end of the utterance. That is, the acoustic predictor of the utterance length
appeared at the beginning of the utterance, and the predictor of the utterance boundary appeared shortly before the end of the utterance.

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第16回のLC研究会を以下の予定で開催します。

今回は9月にある国内学会の発表練習として、4人が発表します。

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第16回LC研究会
日時: 2010年9月1日 (水) 13:00〜19:00(最大)
場所: 国立国語研究所モニター室
発表者&題目:
1. 久保田ひろい(千葉大学大学院融合科学研究科)
携帯メールにおける会話終結部の定形化:
携帯メールにおいて「会話の終了」はどのように達成されるか
2. 榎本美香(東京工科大学メディア学部)
多人数会話において修復はどのように生じるか
—コミュニケーションにハンディキャップを抱える人を含む雑談データを通じて—
3. 東山英治(千葉大学大学院人文社会科学研究科)
ゼロ代名詞に同期するジェスチャー
4. 伝康晴(千葉大学文学部)
同期発話の認知メカニズムに関する一考察
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【社会言語科学会第26回研究大会】

タイトル:携帯メールにおける会話終結部の定形化:
携帯メールにおいて「会話の終了」はどのように達成されるか
著者:久保田ひろい(千葉大学大学院融合科学研究科)
概要:
電話会話において会話の終結部は非常に言語形式の定型性が高く、談話の構造も慣習化されていることが指摘されているが(e.g. Schegloff & Sacks, 1973)、電話でのやりとりでは、こうした一連の慣習化された手続きの遂行にさほどの時間を要さないのに対し、携帯メールでは、入力時間、送受信時間を必要とし、さらに一つのメール内でターンを交代することができないため、これらの一連の手続きをすべて行おうとすれば、会話の終結のためだけに何度もメールの送受信が必要になってしまう。そこで発表では、収集したメール会話のデータをもとに、携帯メールの会話終結部がどのような特徴を持つのかを分析した。電話会話では特定の談話標識(「じゃあ」など)が談話終結部の特定個所に生起することが高度に慣習化されることで、最終発話交換が行われずに終結することも少なくないことが指摘されているが(熊取谷, 1992)、携帯メールでは、「じゃあ」などの特定の談話標識の使用に加え、”相手の使用した絵文字の借用”など会話終結部の絵文字使用にはいくつかの型が見られた。
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【日本認知科学会第27回大会】

タイトル:多人数会話において修復はどのように生じるか
—コミュニケーションにハンディキャップを抱える人を含む雑談データを通じて—
著者:榎本美香(東京工科大学メディア学部)
岡本雅史(成蹊大学理工学部)
概要:
本論文の目的は,多人数会話において修復連鎖がどのように行われているかを明らかにすることである.そのために,コミュニケーションにハンディキャップを抱える人々を含む多人数雑談データを通じ,参与者役割と各参与者の認知状態という観点から,多人数会話特有の修復連鎖構造を分析する.この分析から,(1)修復連鎖は話し手と特定の聞き手の間でだけ生じるのではなく,すべての参与者が参与するものであること,(2)すべての参与者が共有基盤構築のために各自の認知状態に応じた参与の仕方をしていること,(3)ときに<合意形成フェーズ>と呼びうる連鎖を伴うことを例証する.
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【日本認知科学会第27回大会】

タイトル:ゼロ代名詞に同期するジェスチャー
著者:東山英治(千葉大学大学院人文社会科学研究科)
伝康晴(千葉大学文学部)
概要:
ジェスチャーは言語の単なる付属品でなく、談話構造を分析する手がかりとし
て使用され注目を集めている(McNeill et al., 2001; 古山, 2002, 2009)。特に、ある内容のまとまりに言及する際に繰り返し生起するジェスチャーはキャッチメントと呼ばれ、ジェスチャーと談話の研究の中心的なものとなっ ている。しかし、これら従来の研究はどのようなタイミングでキャッチメントが生起するかについては語っておらず、その生起要因はいまだ解明されていない。本研究では、ジェスチャーの生起する事例を分析し、ジェスチャー生起の仮説を提案する。また、その仮説を検証するためのコーパスの策定にあたり、音声に付与するタグを提案する。
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【日本認知科学会第27回大会】

タイトル:同期発話の認知メカニズムに関する一考察
著者:伝康晴(千葉大学文学部)
菅野香緒利(元千葉大学文学部)
概要:
会話においては、あいづちや話者交替のタイミングなど、参与者の行動の間に時間的な協応構造がみられる。その最たるものとして、話者間で同一の内容を一音一音同期させて発話する同期発話がある。本研究では、同期発話の背後にある認知メカニズムについて考察する。伝送遅延環境下での対話において半自発的に発現した同期発話の統計的な分析に基づき、同期傾向に影響を与える2つの要因—自己内リズムと局所的調整—を検討する。本研究の結果から、協応現象の一般的なモデルとしての二重モデルの可能性を議論する。
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第15回のLC研究会を以下の予定で開催します。

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第15回LC研究会
日時: 2010年6月21日 (水) 17:00〜19:00
場所: 国立国語研究所モニター室
発表者: 榎本美香 (東京工科大学メディア学部)
題目: 遂行機能障害者支援に向けた非言語活動の行為文法の記述
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ご挨拶

本発表では,科学技術振興機構「さきがけ」公募の研究提案の内容を発表させていただきます.通常の研究発表と違い,これから研究しようという内容で,結果以降がまだないのですが,皆様に研究構想の不備をご指摘していただき,今後の研究に反映させていただくことができれば幸いです.

タイトル

遂行機能障害者支援に向けた非言語活動の行為文法の記述

概要

本研究のねらいは,高次脳機能障害,統合失調症などの精神障害,アルツハイマー型認知症などによって生じる認知機能不全のために様々な行為の遂行が困難な人々(遂行機能障害者)が地域社会で自立的に生活できる認知的バリアフリー社会を実現することにある.その足掛かりとして,本研究では,遂行機能障害者と健常者の日常的な非言語活動データから,(1)参与者に認識される単位である「行為」を抽出し,(2)行為をそれが実行される単位である「行為素」へ分節化し,(3)それぞれの行為素がどのような縦列/並列関係をもって参与者内/参与者間で連結されるのかを「相互連結規則」として記述する.

第14回のLC研究会を以下の予定で開催します。

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第14回LC研究会
日時: 2010年6月23日 (水) 17:00〜19:00
場所: 国立国語研究所モニター室
発表者: 野口広彰 (日本インサイトテクノロジー)
題目: 心理実験を用いたあいづち生起環境の同定法
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概要

あいづちが会話進行上重要な役割を果たすことから、あいづち応答のモデル化に関する研究がこれまで数多く発表されている。あいづち応答のタイミングに関する先行研究の多くは、シグナル仮説(後述)に基き、自然会話コーパス(後述)の観察を通じて、聞き手があいづちを打つ際に手がかりとしてる話し手の発話の特徴(あいづちシグナル)の抽出を目指してきた。そしてその多くが、あいづちが打たれた箇所に先行する話し手の発話部分の特徴に着目し、これらに共通する特徴を発見するという方法が採用してきたが、方法の是非について議論されることはこれまで無かった。本発表では、シグナル文脈推定法について再考し、その基礎となる「あいづち生起環境(ARP)」を提案する。先行研究において分析の基礎として採用されて来た「あいづち生起箇所」(後述)が分析上の基礎として妥当であるかについて
論じ、これに代わる抽出方法について論じる。次に、同一の音声刺激に対して複数の被験者にあいづちが打てそうな箇所をマークさせる心理実験により、話し手発話に対する任意時点でのARP尤度の算出方法について論じる。最後に、ARP尤度の違いがあいづち生起環境らしさを反映していることを印象評定実験により示す。

第13回のLC研究会を以下の予定で開催します。

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第13回LC研究会
日時: 2010年5月26日 (水) 17:00〜19:00
場所: 国立国語研究所モニター室
発表者: 久保田ひろい (千葉大学大学院融合科学研究科)
題目: 絵文字は何を伝えるか:絵文字のパラ言語的振る舞いについて
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概要

「話すように書く(打つ)」と形容されるように、携帯メールで使用される言語は、文字言語を媒介とする一方で、手紙のような文字言語とは異なり、非常に”話しことば”的である。しかし、音声を介したコミュニケーションにおいては、言語情報に加えて、発話意図や発話態度の伝達・理解に寄与するパラ言語情報が同時に与えられるが、携帯メールではこうした情報は全て欠如してしまう。この「パラ言語情報の欠如」が、コミュニケーションに齟齬をきたす可能性がある。そのような制約の中で必要に迫られて誕生し、日本において発展したのが絵字である。しかし、これまで研究の対象とされてきたのは、「笑顔」
や「ハートマーク」のような直接的に発話態度を示すための絵文字であり、それ以外の「ネコ」や「リンゴ」あるいは「電車」といった絵文字は指示対象の代替としての機能、あるいは装飾としての機能しか示されてこなかった。そこで、本研究では、「ネコ」や「リンゴ」などの絵文字も表情の絵文字と同様に、携帯メールにおいて欠如したパラ言語情報を補完し、発話意図や発話態度の伝達・理解に寄与するという仮説のもと、メール音読実験によって得られた音読音声の音響的解析という手法により検証を行った。メール音読実験は、言語情報のみのメール文と絵文字の付与されたメール文をランダムに提示し、実験協力者に読み上げさせた。そこで得られた音読音声の韻律特徴を抽出し、各特徴量をテキストのみの場合と絵文字が付与された場合とで比較した。その結果、表情を表すような絵文字だけでなく、リンゴなどのモノを表す絵文字であっても、メール文に絵文字が付与されると、テキストのみの場合に比べて、F0平均値、F0最大値、F0最小値の上昇、持続時間の引き延ばし、F0曲線の傾きの正の方向への増加という傾向が認められた。

第12回のLC研究会を以下の予定で開催します。

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第12回LC研究会
日時: 2010年4月21日 (水) 17:00〜19:00
場所: 国立国語研究所モニター室
発表者: 丸山岳彦 (国立国語研究所)
題目: 自発的な話し言葉に現れる言い直し表現の機能的分類
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概要

自発的な話し言葉に現れる「言い直し表現」を取り上げ、それらが談話内で果たす機能について、類型化と分析を行ないます。『日本語話し言葉コーパス(CSJ)』のコアに含まれる独話177講演(計447,767語)から、言い直し表現を手作業で抽出した結果、5,970個の言い直し表現を特定することができました。これらを、形態的・機能的な観点から、5つの類型に分類することを提案します。また、CSJの「印象評定データ」を用いて、当該の講演が聞き手に与える印象と言い直し表現の出現傾向について分析を行ないました。その結果、「緊張度」「落ち着きのなさ」「たどたどしさ」の評定値が高くなると言い直し表現の出現率も高くなる傾向が観察されました。

さらに、独話を対象とした上記の認定基準を、対話に適用することを試みたいと思います。対話に現れる言い直し表現について、独話と同じような形態的・機能的な類型が見られるのか、違いがあるとしたらそれは何か、といった点を、みなさんと一緒に考えてみたいと思います。

第11回のLC研究会を以下の予定で開催します。

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第11回LC研究会
日時: 2010年3月30日 (火) 16:00〜18:00
場所: 国立国語研究所417室
発表者: 石本祐一 (東京工科大学片柳研究所)
題目: 「うん」と先行発話の音響的特徴による機能分類
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概要

日本語の「うん」は相槌、応答、承認といった複数の発話機能を担うことができる。本研究では、「うん」と重複する話し手の発話のアクセント句を先行発話として取り上げ、「うん」とその先行発話の音響的特徴が「うん」の発話機能とどのような関係にあるのかを調査した。その結果、相槌の先行発話は発話の継続を聞き手に示すような特徴を有しており、相槌の「うん」は話し手の妨害をしないように調整している傾向が見られた。さらに、「うん」と先行発話の音響特徴量から「うん」の発話機能を弁別することを試みた。一般化線形モデルへの当てはめを行った結果、先行発話の基本周波数(F0)の変化幅、パワーの変化幅、F0最大値からアクセント句末までの時間長、 先行発話と「うん」の重複時間を用いることで、相槌の約89%、応答・承認の約76%が弁別できた。