「ことば・認知・インタラクション10」
講演内容に当日発表資料をリンクしました。
趣旨
会話は、ことばと認知とインタラクションが出会う場です。私たちのプロジェクトでは、言語学・心理学・会話分析・認知科学・情報工学など、さまざまなアプローチから会話や話し言葉の諸現象に関する研究を行なっています。今回は2013年から数えて10回目の開催となります。今回は、主催する2つのプロジェクトの集大成として、「日常・特定場面コーパスが拓く言語・相互行為研究の可能性」と題したパネル討論を設けることにしました。多彩なパネリストとともに活発に議論したいと思います。多くの方の参加をお待ちしております。
- 日時:2022年3月10日(木) 13:00-18:10
- 場所:オンライン開催(Zoom)
- プログラム
13:00-13:10 開会挨拶 13:10-13:50 講演1:名塩征史(広島大学)
教えるための参加・学ぶための参加:
年少者向け空手教室における指導-学習過程の分析14:00-14:40 講演2:黒嶋智美(玉川大学)
行為構築の資源としての味覚14:50-15:30 講演3:小磯花絵(国立国語研究所)
『日本語日常会話コーパス』バランスの検証と研究の可能性15:40-16:20 講演4:高梨克也(滋賀県立大学)
フィールドインタラクション分析の技法としての「活動」概念16:30-18:10 パネル討論:
「日常・特定場面コーパスが拓く言語・相互行為研究の可能性」司会: 伝康晴(千葉大学) パネリスト: 岡部大介(東京都市大学) 片岡邦好(愛知大学) 串田秀也(大阪教育大学) 中野幹生(C4A研究所) - 参加費:無料
- 定員:300名(先着順)
- 参加申込:参加を希望の方は、このフォームから申し込みください。
- 〆切: 2022年3月8日 23:59
- 3月9日中に参加方法をメールでお送りします。
- 問い合わせ: lci2022 [at] jdri.org
- 主催:
講演1内容
- タイトル:教えるための参加・学ぶための参加:年少者向け空手教室における指導-学習過程の分析
- 講師:名塩征史(広島大学)
- 発表資料: LCI2022_Nashio
- 要旨:本研究が分析の対象とする年少者向け空手教室の稽古は、複数の練習生による基本動作の反復、形の演武、組手などの様々な活動を、師範を中心とする数名の指導者が号令によって制御し、活動形式に合わせて参与者間の配置を工夫することによって組織化されている。本発表では、当該教室における学ぶ行為、教える行為、その両者の間で起こる相互行為を対象としたマルチモーダル分析を通して、言語化/明示化し難い「わざ」の指導-学習に当たって各参与者に求められる「参加の仕方」と「稽古の仕組み(制度や形式)」との関連について考察する。
講演2内容
- タイトル:行為構築の資源としての味覚
- 講師:黒嶋智美(玉川大学)
- 発表資料: LCI2022_Kuroshima
- 要旨:本発表では、参与者の味覚を資源として構築する行為およびその連鎖を分析することで、どのように相互行為への参加の仕方が組織されているのかについて、その一端を明らかにしてみたい.何かを食することによる味覚は、相互行為の行為産出の資源として用いられることで、個人に閉ざされた主観的な感覚ではなく、公的で社会的基準のもとに理解される.特に本発表では、そうした味覚を資源として達成される、1)知識、2)共感、3)義務にかかわる行為が、それぞれどのように構築され、参与者の異なる地位や知識状態を参照することで相互行為への参加を可能にしているのか記述を試みる.
講演3内容
- タイトル:『日本語日常会話コーパス』バランスの検証と研究の可能性
- 講師:小磯花絵(国立国語研究所)
- 発表資料: LCI2022_Koiso
- 要旨:『日本語日常会話コーパス』(CEJC)では、多様な場面・話者の会話200時間を集めるために、(1) 性別・年齢をバランスさせた40名の協力者に、できるだけ多様な場面・話者との会話の収録を依頼する「個人密着法」と、(2)この方法では収集しづらい場面・話者の会話を、調査者が主体となり収録する「特定場面法」により収録を行った。こうした方法を採用することで、CEJCに収録されているデータが設計通りバランスがとれたものになっているかを、話者と会話の両面から検証する。また、CEJCを用いた予備的分析を通して、多様な話者・場面の会話を収めたCEJCを活用した研究の可能性を示す。
講演4内容
- タイトル:フィールドインタラクション分析の技法としての「活動」概念
- 講師:高梨克也(滋賀県立大学)
- 発表資料: LCI2022_Takanashi
- 要旨:相互行為分析をフィールドワークのための手法の一部として取り込んだ「フィールドインタラクション分析」においては、相互行為のマルチモーダル連鎖内でのさまざまな行為や振る舞いを分析する際に、これらが置かれている「活動」の文脈を積極的に参照することを重視している。しかし、観察可能な行為や振る舞いとは異なり、活動はそれ自体が直接観察できるものであるとは考えにくい。そこで、本発表では、こうしたいわば「背後期待」としての「活動」をあえて推測しながら分析を進めていくことの意義やその際の工夫について紹介するとともに、さまざまな分野で用いられてきた「活動」概念についての理論的整理も試みる。