公開シンポジウム「ことば・認知・インタラクション12」のお知らせ

「ことば・認知・インタラクション12」


趣旨

会話は、ことばと認知とインタラクションが出会う場です。私たちのプロジェクトでは、言語学・心理学・会話分析・認知科学・人工知能など、さまざまなアプローチから会話や話し言葉の諸現象に関する研究を行なっています。今回は2013年から数えて12回目の開催となります。今回は、3つのプロジェクトの合同開催で、多彩な招待講演・講演を行ないます。多くの方の参加をお待ちしております。


招待講演

  • タイトル:子どもと家族による会話エージェントへの接近方法:ビデオ映像の観察データから
  • 講師:伊藤崇(北海道大学)
  • 要旨:音声インタフェースをもち、使用者の言語行動に対して音声による出力を通して反応するスマートスピーカーのようなテクノロジーである「会話エージェント」(voice-based conversational agents)が家庭の中に普及し始めている。こうした事態が子どもの発達に与える影響に関心が払われ始めている(Xu, 2022)。家庭では、会話エージェントと子どもを一対一の閉じた関係として捉えることはできない。音声による入出力は子どもと家族による会話とシームレスにつながっているからである。本発表では、このような考え方に基づき、家族間会話において会話エージェントがどのように埋め込まれているのかを記述する。使用の文脈を丁寧に追うことは、テクノロジーの改善に結びつくだけでなく、子どもとテクノロジーとが結びついて起こる発達過程の把握につながるだろう。

講演1

  • タイトル:子どものごっこ遊びにおける設定共有の試み
  • 講師:居關友里子(国立国語研究所)
  • 要旨:現在、国立国語研究所では、子どもたち、そして彼らと関わる人々の間で経験されている日常的なコミュニケーションや言語使用などを分析するための資料、『子ども版日本語日常会話コーパス(CEJC-Child)』の構築を進めている。本発表ではコーパスの構築状況について報告を行うとともに、格納予定のデータの使用例として、子どもと保護者の間で行われるごっこ遊びについて分析を行う。ごっこ遊びの参与者たちが、当該場面における設定をどのように相手に共有し、生じた問題に対処しつつ遊びを進行させているのかを記述することを通して、日常に埋め込まれた創造的な遊びの場が子どもに与えている経験について考察する。

講演2

  • タイトル:家庭内相互行為における親と年長の子どもの協働
  • 講師:遠藤智子(東京大学)
  • 要旨:家庭における相互行為は、参与者の成員カテゴリーと紐づいたアイデンティティが様々な形で顕在化する場であり、親は親として、子どもは子どもとして振る舞う様が多く見られる。一方、複数の子どもがいる家庭においては年長の子どもが年少の子どもの面倒をみることがあり、その際、年長の子どもは、子どもよりも親側に立っているかのようである。本発表では、家庭内において年長の子どもが親と協働して年少の子どもと関わる場面に注目し、協働の契機や子どもの行動のタイミング、および協働的行為の連鎖の構造を記述する。分析を通じ、進行中の活動と結びついた、解決すべきタスクとして、年長の子どもが親との協働に参加していることを示す。

講演3

  • タイトル:身体的活動の教示における文法と身体:身体を使った実演にともなう発話の分析から
  • 講師:安井永子(名古屋大学)
  • 要旨:踊りや折り紙など、身体全体であれ一部であれ、身体の動きを要する活動の教示では、動作や作業の説明と指示は、身体的実演を通してなされることが多い。そのため学び手は、教え手の発話の完了前であっても、教え手の身体を見ることで、どのような動きが指示されているかを理解し、その指示への応答となる動きを開始することができる。では、このような、身体動作が中心となる活動において、発話はどのような役割を果たしているのだろうか。本発表では、この点について、教え手の発話が、教え手自身の身体動作および学び手の身体動作との調整のもと組み立てられるさまを詳細に記述することを通して考察する。

関連イベント

本イベントは、2/27~3/1の4日間、国立国語研究所において開催される、会話・対話・相互行為研究に関する連続イベントの一部です。他のイベントにもふるってご参加ください。