第95回LC研の案内です。
第95回LC研究会
日時: 2024年8月12日(月) 16:00〜18:00
場所: 早稲田大学 早稲田キャンパス 26号館302教室
発表者: 名塩征史(広島大学)
題目: 「学び手の「良い実践」を公に取り立てる指導:年少者向け空手教室における指導-学習場面のマルチモーダル分析」
概要
武道や伝統芸能では、熟練した実践者による身体や道具の巧みな制御を「わざ」と呼び、その「わざ」が長きにわたって洗練され、伝承されている。こうした「わざ」の習得には、熟練者の実践を「真似して盗む」ことが推奨されており、稽古では学び手による指導者の動きの観察と反復が重視される傾向にある。しかし、「わざ」には観察可能な身体の動きだけでなく、その動きに伴う微妙な身体感覚(動感)や、実践に適した状況を見極める認知能力など、直接には観察できない要素も含まれる。したがって、学び手には指導者の動きを繰り返し真似る活動を通して、そうした動感や認知を自分自身の身体と感覚の中に探し出し、それを活性化することが求められることになる。本発表の前半では、こうした「わざ」の感覚的・認知的な側面(観察できず、かつ言い表し難い側面)の重要性を確認し、その伝承を支える間身体性と学び手の探索的態度について、「わざ言語」研究や身体教育学における知見を援用しながら再考する。本発表の後半では、年少者向け空手教室における指導–学習場面、特に指導者が練習生の1人ないし1組の実践を他の練習生が見守る中で公に指導・評価する場面のマルチモーダル分析を行う。同場面における指導者の発話には、指導の直接の対象となる練習生の動きを評価し、修正する発話に加え、それを見ている周囲の練習生に向けた賛同や共感を求める発話(「〜だね」「〜だろ」)が観察される。本発表ではこうした指導を、熟練者たる指導者の「わざ」を見る目(評価基準や価値観)を練習生に突きつけ、練習生による自己の感覚と認知の探索を促すものとして捉え直す。
アクセス
東京メトロ東西線早稲田駅から徒歩7分
都電早稲田駅から徒歩4分