「ことば・認知・インタラクション13」
趣旨
会話は、ことばと認知とインタラクションが出会う場です。私たちのプロジェクトでは、言語学・心理学・会話分析・認知科学・人工知能など、さまざまなアプローチから会話や話し言葉の諸現象に関する研究を行なっています。今回は、私たちのプロジェクトと密接な関係のある研究を行なっている若手研究者を中心にすえ、招待講演・講演を行ないます。多くの方の参加をお待ちしております。
- 日時:2025年3月19日(水) 13:00~18:00
- 場所:早稲田大学 早稲田キャンパス7号館307教室
https://www.waseda.jp/top/access/waseda-campus - プログラム:
13:00-13:10 開会挨拶 13:10-13:50 講演1:臼田泰如(静岡理工科大学)
身体感覚の仮構/再構:クライミングにおけるクライマーと周囲のやりとり14:00-15:00 招待講演1:酒井晴香(東京国際大学)
地域高齢者のコミュニケーションと空間的な近接性15:10-15:50 講演2:門田圭祐(早稲田大学)
日本語の指示詞選択に指示対象の見えやすさが及ぼす影響16:00-17:00 招待講演2:井上昂治(京都大学)【オンライン発表】
対話システムの最前線と可能性:「できる」から「わかる」へ17:10-18:00 総合討論 - 参加費:無料
- 主催:
招待講演1
- タイトル:地域高齢者のコミュニケーションと空間的な近接性
- 講師:酒井晴香(東京国際大学)
- 要旨:地域社会の生活では、通勤や通院、買物などの日常的な活動のなかで、近隣住民同士の交流が生まれる。本発表ではそのような交流の一つとして、地域商店や移動販売での買物をきっかけに生じた地元販売者と高齢利用者による対面のコミュニケーションに焦点を当て、地域社会の「なじみの場」が形作られる様相を描く。国内の過疎地域で行ったフィールド調査でのデータ収集方法を紹介したうえで、長年見知った間柄にある人々の相互行為に関して空間的な近接性に注目して事例を報告し、なぜまさにその時点で会話の生起が可能であったのかを考える。
招待講演2
- タイトル:対話システムの最前線と可能性:「できる」から「わかる」へ
- 講師:井上昂治(京都大学)
- 要旨:大規模言語モデル(LLM)を中心とした生成AIの進歩は留まるところを知らない。その主要な応用である対話システムは、既に人間を超える能力を示し、我々の社会活動の一部を担いつつある。これまでの対話システム研究は、人文科学と理工学の連携を通じて「コミュニケーションの仕組み」の解明を目的の一つとしてきた。しかし、人間らしい対話が「できる」ようになった今、その仕組みはどこまで「わかった」と言えるのだろうか。本発表では、コミュニケーションにおける重要な要素である「ターンテイキング」に着目し、その最新モデルを紹介する。さらに、LLMの発展を踏まえ、文理融合によるコミュニケーション研究の新たなアプローチと今後の可能性について議論を深めたい。
講演1
- タイトル:身体感覚の仮構/再構:クライミングにおけるクライマーと周囲のやりとり
- 講師:臼田泰如(静岡理工科大学)
- 要旨:本発表は、いわゆるロッククライミング(ボルダリング)において、その時点で登攀を行なっている人(クライマー)と、そのアクティビティをともに行いつつもその時点では登攀してはいない人とのやりとりについて、クライマーの動作に注目して分析する。ボルダリングの登攀自体はひとりで行わざるを得ないものである一方、ルートやホールド、ムーブの検討や、登攀中のホールドの位置の指示など、やりとりは頻繁に生じる。これらのうち、特にクライマーが今まさに行なっている登攀に対する発話は、その登攀とのレスポンシブな関係を取り結ぶとともに、その登攀における身体感覚や負荷に感応的な形で組み立てられている。
講演2
- タイトル:日本語の指示詞選択に指示対象の見えやすさが及ぼす影響
- 講師:門田圭祐(早稲田大学)
- 要旨:本発表では、日本語における指示詞の選択に指示対象の視認性が及ぼす影響について報告する。話者が指示詞を用いて他者に何かを指し示すときには、コ系・ソ系・ア系のいずれかを選択する必要がある。それらの形式は、話者や聞き手から対象までの距離に応じて選ばれる。加えて、当該の選択では対象の視認性も考慮されることが知られているが、話者と聞き手にとっての視認性がそれぞれどのような影響を及ぼすのか、その詳細は明らかになっていない。そこで本研究では、指示詞を産出させる実験課題を用いて検討を行った。その結果、話者と聞き手双方の視認性が、指示詞の選択に影響を与えることが示された。本発表では、話者と聞き手にとっての対象の視認性が指示詞選択に及ぼす影響と、話者から対象までの距離に応じた当該効果の変化について分析した結果を報告、議論する。
関連イベント
本イベントは、3/20~22の3日間、早稲田大学において開催される人工知能学会SLUD第103回研究会の前日に開催されます。研究会にもふるってご参加ください。