「ことば・認知・インタラクション3」
趣旨
会話は、ことばと認知とインタラクションが出会う場です。私たちのプロジェクトでは、言語学・音声学・心理学・会話分析・情報工学など、さまざまなアプローチから会話や話し言葉の諸現象に関する研究を行なっています。一昨年度・昨年度に引き続き、今年度も公開シンポジウムを開催します。今回は、会話分析・相互行為論の立場からの文法研究を精力的に進めているイリノイ大学の林誠先生を招待講演にお招きし、みなさんと共に議論する場を設けました。多くの方の参加をお待ちしております。
- 日時:2015年3月20日(金) 13:00-17:30
- 場所:国立情報学研究所12階 1208&1210会議室
http://www.nii.ac.jp/about/access/ - プログラム:
13:00-13:10 開会挨拶 13:10-13:50 講演1:増田将伸(甲子園大)
応答の前置きとして現れる「どう+コピュラ」型質問の相互行為的特徴14:00-15:00 招待講演:林誠(イリノイ大)
Collateral effects(付随効果)と相互行為言語学の展望15:20-16:00 講演2:大場美和子(昭和女子大)
外国人介護従事者の介護の談話の特徴と問題の分析16:00-16:40 講演3:小磯花絵(国語研)
均衡性を考慮した大規模日常会話コーパスの構築に向けて16:50-17:30 総合討論 - 参加費:無料
- 主催:
招待講演内容
- タイトル:Collateral effects(付随効果)と相互行為言語学の展望
- 講師:林誠(イリノイ大)
- 要旨:社会学の分野で発展してきた会話分析の方法論は、言語研究、特に実際の場面での言語使用を対象とした文法研究に寄与するところが大きい。本講演では、Sidnell & Enfield (2012)によって提唱されたcollateral effects(付随効果)という概念を紹介しつつ、会話分析からみた文法研究の近年の動向、今後の展開について議論する。「言語相対論研究の第3の領域」として提案されたcollateral effectsという概念は、示唆に富むものではあるものの同時に批判の余地もある概念である。この発表を機に、参加者の方々と大いに議論できることを期待する。
講演1内容
- タイトル:応答の前置きとして現れる「どう+コピュラ」型質問の相互行為的特徴
- 講師:増田将伸(甲子園大)
- 要旨:本発表では、「どう+コピュラ」型質問が応答の前置きとして現れる例を会話分析の手法により分析する。この前置きは、応答の前置きとして現れる他のターン冒頭要素のように質問への抵抗を行うという側面と、応答者が応答の途上にあり、質問の要請に応えようとしているという協調的スタンスを示すという側面を併せ持つ点が特徴的である。この前置きを含む発話の構成と連鎖中の位置を検討しながら、この前置きの相互行為的特徴を議論したい。
講演2内容
- タイトル:外国人介護従事者の介護の談話の特徴と問題の分析
- 講師:大場美和子(昭和女子大)
- 要旨:本発表では、外国人介護従事者の介護技術講習会ならびに介護施設でのアルバイト場面における録音データを対象に、介護を行う際の談話のパターンとそこで発生する日本語の問題を分析する。分析結果は、介護の現場での就労につなげるため、日本語教育の観点から考察を行う。
講演3内容
- タイトル:均衡性を考慮した大規模日常会話コーパスの構築に向けて
- 講師:小磯花絵(国語研)
- 要旨:現在、大規模な日本語日常会話コーパスの構築を目指し、その準備研究として、(1)均衡性を考慮した会話コーパスの設計、(2)種々の日常会話を収録するための方法論、(3)日常会話を適切・効率的に転記するための方法論の策定を進めている。とくに(1)については、多様な日常会話をできるだけ網羅して記録することを目指し、現代日本人がどのような種類の会話をどの程度行っているのかを調査し、それに立脚してコーパスを設計することとした。本発表では、現在進行中の調査の概要と中間結果について報告すると同時に、調査に基づき日常会話コーパスをどのように設計するか、その方針について議論する。