公開シンポジウム「ことば・認知・インタラクション6


「ことば・認知・インタラクション6」


趣旨

会話は、ことばと認知とインタラクションが出会う場です。私たちのプロジェクトでは、言語学・心理学・会話分析・認知科学・情報工学など、さまざまなアプローチから会話や話し言葉の諸現象に関する研究を行なっています。今回は2013年から数えて6回目の開催となります。今回は、新たな試みとして、「言語・相互行為研究の新展開:多様な場面の会話データから見えてくること」と題したパネル討論を設けることにしました。多彩なパネリストとともに活発に議論したいと思います。多くの方の参加をお待ちしております。



講演1内容

  • タイトル:援助はどのように行われるか:サービス場面の相互行為分析
  • 講師:森本郁代(関西学院大学)
  • 要旨:近年、「今直面している問題を解決するための援助の求めとそれに対する他者の援助もしくは援助の申し出(recruitment for assistance)」という観点から、「依頼」と「申し出」を、連続的な行為として捉える研究が見られる(Kendrick and Drew, 2014, 2016)。これらの研究の多くは、主に援助の求めが、それぞれの連鎖環境や物理的環境の中で、どのような言語的、非言語的資源を用いて組み立てられ、認識可能となっているのかに焦点を当てている(Kendrick and Drew, 2016; Drew and Kendrick, 2017)。本報告では、サービス場面におけるrecruitment for assistanceの連鎖に焦点を当て、特に、援助の申し出が明示的に行われない場面において、援助がどのように行われるのかを記述するとともに、そうした場面での援助の仕方と援助を行う側のアイデンティティとの関係について議論する。

講演2内容

  • タイトル:会話する動機:職務でのコミュニケーションの分析に向けて
  • 講師:高梨克也(京都大学)
  • 要旨:さまざまな日常生活場面で「自然に生起する会話」を分析する際の重要な注意点の一つは、各参与者が「会話に参与する動機」を持っているはずだということである。この「動機」という観点について、本発表では、多職種ミーティングやコンサルテーションといった、職務としての側面が明確なコミュニケーション場面を対象として、それぞれの職務に関わる利害関心や権利義務などの観点からの分析を行うことを通じて、会話への参与動機という観点から会話を特徴づける方法について模索したい。

講演3内容

  • タイトル:同定・確認作業における「見ること」の相互行為的基盤
  • 講師:黒嶋智美(玉川大学)
  • 要旨:本発表では、外科手術における外科医の血管同定作業や、工作における確認作業など、視覚がその構造上、資源となっている相互行為を分析することで、「見ること」の参与者に対する帰属可能性(西阪, 2016)が、どのようにこれらの相互行為を支える基盤となっているのかを明らかにする。対象物を同定したり確認したりする際、行為者の視覚は、言語や身体、道具、他の知覚などによって示され、行為者に固有なものとして扱われる。そのため、これらの行為の受け手にも視覚による同じ対象物を評価することが適切となって相互行為が展開される。このような行為連鎖の記述によって、概念的に多様である「見ること」が、同定や確認を実践上の目的に合わせて行っている参与者にとって、どのような経験として立ち現われているのかについて議論を試みる。