「ことば・認知・インタラクション11」
プログラムに当日発表資料をリンクしました。
趣旨
会話は、ことばと認知とインタラクションが出会う場です。私たちのプロジェクトでは、言語学・心理学・会話分析・認知科学・情報工学など、さまざまなアプローチから会話や話し言葉の諸現象に関する研究を行なっています。今回は2013年から数えて11回目の開催となります。今回は、今年度から新しくスタートした2つのプロジェクトのキックオフとして、「会話コーパスが拓く言語・相互行為研究の新たな地平」と題したパネル討論を設けることにしました。多彩なパネリストとともに活発に議論したいと思います。多くの方の参加をお待ちしております。
- 日時:2023年3月4日(土) 13:00-18:00
- 場所:国立情報学研究所1208・1210会議室
- プログラム
13:00-13:10 開会挨拶 13:10-13:50 講演1:門田圭祐(日本学術振興会/早稲田大学) [pdf]
アドレス手段とアドレス先の複層的アノテーション:
発話のアドレスの体系的記述に向けて14:00-14:40 講演2:高木智世(筑波大学) [pdf]
吃音「症状」と相互行為実践14:50-15:30 講演3:岡本雅史・Marina B. ASAD (立命館大学) [pdf]
非難の〈ターゲット〉と語りの〈宛て先〉:
否定的評価をめぐる相互行為のアドレス性15:50-18:00 パネル討論:
「会話コーパスが拓く言語・相互行為研究の新たな地平」プロジェクト紹介1: 伝康晴(千葉大学) [pdf] プロジェクト紹介2: 小磯花絵(国立国語研究所) [pdf] 指定討論者: 岩田夏穂(武蔵野大学) 馬塚れい子(理化学研究所) 辻井潤一(産業技術総合研究所) - 参加費:無料
- 参加申込:参加を希望の方は、このフォームから申し込みください。
- 当日参加もできますが、可能な限り、事前申し込みください。
- 問い合わせ: lci2023 [at] jdri.org
- 主催:
講演1内容
- タイトル:アドレス手段とアドレス先の複層的アノテーション:発話のアドレスの体系的記述に向けて
- 講師:門田圭祐(日本学術振興会/早稲田大学)
- 要旨:発話を特定の他者に宛てるための言語的・非言語的なふるまい(アドレス手段)は、その発話に誰が応じるべきかを示す点でコミュニケーションの基礎を成している。しかし、実際のやりとりにおいてどのようなアドレス手段が、どのように用いられているかについては、視線や呼びかけなどの一部の手段を除き、ほとんど明らかにされていない。そこで本研究では、実際のやりとりにおけるアドレスの実態を明らかにすることを目指し、『日本語日常会話コーパス』および『千葉大学3人会話コーパス』に含まれる、3人以上の参与者による会話データ中の発話にアノテーションをおこなった。この際、各発話について、(1)アドレス手段と、(2)アドレス先となる参与者の情報を付与した。加えて、実際の会話では複数の技法が同時に用いられることをふまえ、非言語的手段、言語的手段、連鎖的手段の3つの観点から情報を複層的に付与した。本発表では、アノテーションから見出されたアドレス手段について報告するとともに、現在試行中のアノテーションの指針の課題について議論する。
講演2内容
- タイトル:吃音「症状」と相互行為実践
- 講師:高木智世(筑波大学)
- 要旨:本発表では、日常的相互行為場面における吃音者の発話に着目し、そこに含まれる吃音「症状」が、単に病理的非流暢性を示しているわけではなく、「今ここ」の相互行為実践における行為・意味理解に資する仕方で産出途上の言語行為に組み込まれていることを、事例分析を通して明らかにする。また、このような視点で吃音者の発話を詳細に分析することは、吃音者であれ非吃音者であれ、より精確な行為の相互理解の確立に向けてどのような課題に直面し、どのような資源を利用してその課題をその都度乗り越えているのかという会話分析的問いに対して有効な視座を与えるものであることを示す。
講演3内容
- タイトル:非難の〈ターゲット〉と語りの〈宛て先〉:否定的評価をめぐる相互行為のアドレス性
- 講師:岡本雅史・Marina B. ASAD(立命館大学)
- 要旨:日常会話から筋書きのある〈オープンコミュニケーション〉(岡本他, 2008)に至るまで、相互行為場面ではしばしば他者に対する否定的評価が表明される。誰かに対する不満を表明したり、アイロニーで相手を皮肉ったり、その場にいない第三者の悪口を公言する、などが例に挙げられよう。アドレス性の観点から見ると、こうした否定的評価の発話や談話は、その直接の受け手(=宛て先)がそのまま非難や不満のターゲットとなる場合と、その場にいない第三者をターゲットとして別の受け手に表明される場合とに区別することが可能である。そこで本研究では、こうした二重のアドレス性がどのように否定的評価をめぐる相互行為を構造化するのかについて、(1)『日本語日常会話コーパス』における直接的不満表明と間接的不満表明の談話事例、(2)プロの漫才対話における「悪口」芸の事例、の両面から議論する。